朝のSHRは朝練の所為もあってか、非常に怠い。つーか朝からあんなに走らせるとか最早鬼だろぃ。まぁ今じゃ大分慣れたけど。それにしても眠い。あっ、仁王の奴寝てやがる。俺も寝っかな。そんな事を思いながら担任の話を聞き流しているといつの間にやら終わっていたらしく、隣の仁王の席に名字がやって来た。


『におーくーん。起きてくださーい』
「……」
『におー』
「…何。俺は眠いんじゃ」
『あっ、おはよう。もうすぐ一限目始まるよ』
「そんなんでいちいち起こしなさんな」
『因みに一限目はネッチーですので』
「…前言撤回、起こしてくれてありがとさん」
『いえいえ。ってか仁王が寝てると私までとばっちり来るんだよね』
「学級委員長もお疲れじゃな」
『誰の所為よ』


隣からは楽しそうな笑い声が聞こえる。元々仁王と名字が仲良いのは知ってたけど真っ先に仁王の所に行くのかよ。しかもその後はその辺に居た男子と仲良さげに喋ってるし。まぁ名字は誰からも好かれてるからな。名字を嫌いな奴とかそんなに居ねえと思う。でも…仁王には挨拶すんのに俺にはしてくれねぇのかよ。…何でだ。こんな事今までだって何回もあったのに今日は無性に腹立つ。今日のランニングが何時もより多かったからか?
俺が頭の中で一人葛藤していると、チャイムが鳴る残り一分の所まで迫っていた。真面目な名字は大抵チャイム前に席に着く。名字が自分の席に戻ろうと俺が座る席の前を通った時、俺は何に駆られたのか思わず名字の手を掴んでいた。


『…丸井?』
「…何でさ」
『えっ?』
「俺には挨拶してくんねぇの」
『あぁ、そう言えば言ってなかったね。おはよう丸井』
「…はよ」
『朝から部活お疲れ様。今日も一日頑張ろうね』


名字が言うのと同時にチャイムが鳴った。名字は慌てて席に座る。俺はと言うと、さっきの苛立ちが嘘のように機嫌が良かった。俺だけに向けられた言葉、笑顔。それだけで今は満足だった。顔のニヤケが止まんねぇ。我ながら気持ち悪いと思う。


「おーおー、機嫌が良さそうじゃな」
「うっせ、黙ってろぃ」
「何じゃ、俺にも妬いとったくせに」
「知って…たのかよ」
「ブンちゃんの事は何でもお見通しじゃき。ってか分かりやすすぎ」
「仁王が鋭いだけだろ」
「そうかもしれんのぉ」


仁王のニヤけた視線がうぜぇから、取り敢えず授業に集中する振りをした。本当は名字の事で頭が一杯で、気付けば今も名字を見てる。更に仁王はそんな俺を面白がる目で見てるんだろうなとは思いつつも、名字からは視線が外せなかった。


03 誰にでもスキだらけ



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