右斜め前の席の名字名前。コイツが最近、俺の視界によく入ってくる。まぁ名字が仁王と仲が良いみたいだから自然と目に入ってしまうのだろう。と、ついこないだまでそう思っていた。そう、仁王が俺に変な事を言ってくるまでは。


「おーい、ブンちゃん」
「なんだよ。ってか、そう呼ぶなって言ってるだろぃ」
「まぁ気になさんな。それより、ブンちゃんは名前みたいな女が良いのかのう」
「はぁ?何言ってんだ?」
「何時も名前の事見てるじゃろ」
「別に見てねぇけど」
「いーや、俺の目は誤魔化せないぜよ」


ニヤニヤしながら俺を見てくる仁王。俺はコイツのこう言う所が好きでもあり苦手でもある。あっ、好きって別にそう言う意味じゃねぇから。断じて。
それよりも俺が何時も名字を見てるって?何で。俺が名字を見てるんじゃなくて名字が俺の視界に入ってきてるんだ。仁王と話してる声が聞こえてくるからそっちに目が行くだけだし、普段もやたら目立つから名字に目が行くだけ。


「…何じゃ。今まで無自覚だったのか」
「んなこと考えた事も無かったし」
「自覚したとこで、協力してやらんこともないぜよ」
「何を」
「名前とブンちゃんの甘く切ない恋を」
「はぁぁ!?何でそうなんだよ!」
「だって好きなんじゃろ?名前の事」


俺が名字を好き?ははっ、有り得ない……事もないかも。だって、現に俺は何時も名字を見ていたらしいし(あくまでも仁王から見たら、だ)名字を見てると、何つーか…こう、胸が…。って、俺は女子か!…うわっやべー、そう思ったら急に顔が熱くなってきた。


「どうした、顔が赤いぜよ」
「うっせー!誰の所為だよぃ!!」
「あっ、名前」
「はっ!?嘘!」
「うん、嘘」
「てめっ、仁王!!」
「ははっ、ブンちゃん面白いぜよ」
「うっせー!!」
「そう怒りなさんなって。ほれ、名前も来たことだし」
「流石に二回目は騙されねぇぞ!」
『あたしが何?』
「うおっ!?名字、マジで居たのかよ!」
『何、あたしが居ちゃ悪いの?』
「いえ、滅相もございません」


俺がそう言うと、名字は宜しい、とか言いながら微笑み、仁王には日直ちゃんとやれとか言って去っていった。


「っち、折角サボろうと思ってたのにのぉ…」
「……」
「何じゃブンちゃん。照れてるんか」
「て、照れてねーし!」
「まぁ確かに名前の笑顔は可愛いし、」
「かっか、、可愛いとか思ってねぇから!!」
「ちょっ…あー、行っちゃった」


俺は取り敢えず走って教室を出た。特に行く宛もねぇから何時も通り屋上に行く。屋上に行ったら少しは落ち着くと思ったのに、心臓がバクバク言ってて五月蝿い。漸く落ち着いた頃に思い浮かぶのは、やっぱり名字の笑顔だった。


01 僕がきみを、想う気持ち



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