『こ、これからお世話になります東雲ありすです。よ、宜しくお願いひまふ!』


噛んだ。最悪だ。最前列に座っている土方さんは必死に笑いを堪えている。その隣に座る総悟に至っては隠すことなどせず、逆に清々しいくらい爆笑している。自分に非があることは承知しているが、見てて凄く腹が立った。後方のその他大勢の隊士の中にも笑っている輩が何人か見受けられる。何事も最初が肝心だとはよく言ったものだが、その点に置いて私は最悪なスタートを切った。総悟よりもこちらをチラチラ見ながら笑う土方さんの方が癪に障るので一発殴ってやろうかと思った私の頭を、ゴリ…近藤さんが冷ましてくれた。


「そう言うことだから、皆ありすちゃんと仲良くするように!それから山崎!」
「はい」
「ありすちゃんを空いてる部屋まで案内してやってくれ。なるべく内の方にな」
「分かりました」


近藤さんに指名された地味な人が立ち上がり、私をこの場から連れ出した。改めて近くで見ると、やはり地味だった。等と目の前を歩く地味男…げふん。に感想を抱いていると、山…何とかさんが口を開いた。


「東雲さん、だよね。これから宜しく」
『はい、宜しくお願いします山村さん』
「…山崎なんだけど」
『すいません、地味過ぎて覚えられませんでした山本さん』
「初対面のくせに失礼だな!しかも結局名前間違えてるし」
『ははは、それほどでも』
「いや、褒めてないから」


山何とかさんとこうして談笑(まぁ笑っているのは私だけだが)している間に、どうやら目的地に辿り着いたようだ。玄関近くの応接間からは結構な距離がある。移動には不便な場所だな。


「はい、此処が君の部屋だよ」
『ありがとうございます』
「これから仲間になるんだし、敬語なんて使わなくてもいいよ」
『はあ』
「俺の部屋は此処から三つ隣の部屋だから、何かあったらいつでも言ってね」
『うん』
「じゃ、また夕食時に迎えに来るよ」
『うん』


山何とかさんの後ろ姿を眺めながら、あの人は親切で良い人なのだという事は分かった。しかし、如何せん名前が覚えられない。まぁいいか。私は自分に与えられた部屋の襖を開ける。其処は存外綺麗に保たれており、私の荷物であろう段ボールが二つ程部屋の中央に置かれていた。こうして見ると荷物少ないな。私はガムテープを引き剥がし、中身を箪笥やら何やらと部屋の各所に配置していく。殺風景だった部屋が一気に華やか…と迄はいかないが、何となくそれらしくはなった。一息ついたところで前以て用意されていた布団にダイブする。枕が羽毛な辺り、流石真選組だなと思った。その柔らかさ故に睡魔が襲って来る。土方の奴、今日笑ったこと忘れないからな。いつか殴ってやる。そう心に誓い、夢の世界へと旅立った。



101122



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