人の声で目が覚めた。どうやら陽は随分と高いところまで昇ったらしい。昨日あんだけ寝てたのにまだ寝足りなかったのかよ、と聞き覚えのある声が耳に入った。顔だけをそちらに向ける。


『っと…閻魔大王様?』
「だから違ェっつってんだろ!二回目だぞそのネタ」
「へぇー、土方さんって閻魔大王だったんですかィ。確かにその面は地獄向きだな」
「総悟、テメェ…」
『今日は使いを連れてきたのですね。黄色い頭の…キスケ?』
「それは俺のことかィ」
「俺達をどっかのピンクい笏持った餓鬼の番組と一緒にすんじゃねェ」
「キー君ヒヨコじゃないっぴ、鬼だっぴ!」
「お前も乗るな!」


この顔、この声、この態度。そうか、思い出した。昨日の自称警察の副長さんだ。その自称警察の副長さんは烏帽子を被って笏を持ちだした、悪く言えば盗人が主人公のこのネタ知っていたらしい。そしてキスケさん(一応そう呼ぶことにする)までもが知っているようだ。このアニメ、巷ではブームなのだろうか。まぁそんな事は正直どうでもいいのだが。


『それより今日も来たんですか。警察も案外暇ですね』
「あぁ?忙しい合間を縫って態々来てやったんだ。まぁ此れも仕事の一貫だから仕方ねェけど」
「何でィ、土方さんはロリコンだったのか」
「ちげーよ!何でそうなるんだよ!!」
『安心してください。貴方には毛ほどの興味もありませんから』
「やーい、フラれてやんのー」
「だから違うって言ってンだろ!!」


遂に自称警察の副長さんはキレた。そして隣に居るキスケさんを殴る。にも関わらずキスケさんはひょうひょうとしている。…此の人神経鈍いのだろうか。


「…土方さん、今俺を殴りましたねィ?」
「ああ」
「俺、親父にも殴られたこと無いのに!」
「そりゃ良かったな」
「…この報い受けやがれ。死ね土方ァァ!!」
『…えぇ!?ちょっ、バズーカ!?私も居るんですよ!流石に撃ちませんよね!?』
「男に二言はねェ。俺は有言実行タイプだ」
『だ、だめだって!本当にだめだって!!お願いだからその物騒なものしまってください、キスケさんンン!!』
「そ、そうだぞ総悟!俺達は一般市民を傷つけちゃならねェんだからな!」
「…ッチ、しゃあねェなァ…」
『た…助かった…』


コイツ等は本当に警察なのだろうか。キスケさんはよく解らないけど、自称警察の副長さんと同じ服着てるから多分警察、のはず。ってか危ないよ。寿命三日は縮んだよ。何で警察がバズーカなんて持ってんだよ。せめて拳銃でしょ。何しに来たんだよコイツ等。喧嘩でもしに来たのかよ。…此のままだと今度こそ本当に閻魔大王様と会うことになるかもしれない。


『…もう帰ってください。喧嘩なら他所でお願いします』
「やだ」
『やだって…』
「俺達、と言うか俺はお前を監視するのが仕事だからな」
『えっ、私警察に監視されてるんですか。気分悪っ』
「お前には此れくらいが丁度良いだろ」
「俺は暇だったし土方さんに楯突いた奴なんてそうそう居ないんで、面白半分見に来たって訳でさァ」
「お前には市中見廻りっつー仕事があんだろうが」
「だからちゃんと土方さんの側を見廻ってるじゃねェですかィ。隙を探して抹殺する為に」
「よーし総悟、表出ろ!」
「挑むところでさァ!!」


そう言って嵐は去っていった。今日確信したこと。警察なんてろくな人間じゃない。寧ろアレはチンピラだ。そのチンピラ二人は仲がいいのか悪いのかよく解らない。何なんだ本当に。
…あぁ疲れたな。もう寝よう。自称警察の副長さんが此処に居たらまた寝るのかよ、とか確実に言われそうだな。うん。そう言えばまだ両親に逢ってない。今から逢いに行こうか。…だめだ。疲れて体が動かない。布団を掛け直してからそっと瞳を閉じる。陽の光だとか周囲から聞こえる話し声だとか、そんなのは大して気にならなかった。



「…土方さん、…にはいつ…ですかィ」
「…まぁ…折りをみて、ってとこだな」
「早い方が俺はいいと思いますがねィ」
「…近藤さんと相談してみるわ」



090328



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