出会って間もないが、俺と瞳はかなり打ち解けていた。

俺が此処に居ると瞳が来て、瞳が此処に居ると不思議と俺も来る。
話してみると、かなり気が合う奴だということも分かって、今ではお互い名前で呼ぶ様な仲になった。どちらからと言う訳では無く、自然にお互い名前で呼ぶようになっていたのだ。



『3zは今、授業何?』
「あー…、進路について」
『そっかぁ、詰まらないね。どーりでトシがサボる訳だ』
「まぁな」


まぁな、とは答えたものの、心の中はモヤモヤしていた。
三年になって、進路のことが詰まらないなんて言ってられない。ましてや、夏を目前にしてだ。
だけど、ピンと来ないのだ。
未来…っつってもすぐそこの話なのだけれど、その未来の自分が何をやっているのか。やりたいことが無いわけじゃない。漠然としたものなら一応ある。
自信がないのか、信じ切れていないのか。
自分でも良く分からねぇから、進路については考えたくなくて抜け出してきた。


「瞳のクラス、今体育じゃねぇの?」
『うん、そうだよ』
「行かねーのか?」
『面倒臭いし』
「何でだよ、体育は楽だろ」
『体育…苦手だから』


一瞬、悲しそうな顔を浮かべたように見えたが、俺の見間違いだった。
瞳は何時も通り笑っている。


空を仰ぐと太陽が眩しい。段々と、光が強くなって夏が近づいてくるのが分かった。春の土と青葉のにおいから、梅雨の雨のにおい。それらから移り変わって、夏の空の香りがした。



『夏の香りがする…、もうすぐ夏だね』


思わずフッと笑みが零れてしまった。
慌てた様子で瞳が言う。

『えっ、何!?可笑しかった??』
「いや、俺も同じこと考えてた」





授業は面倒臭くて、結局それを理由にした



08.08.01 のん




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