高校時代は青春真っ盛りとか、輝かしい時期だとか、世の中の人々は口々に言う。
果たしてそれは本当にそうなのか?そんなのは個人によって大分変わってくると思う。
例えば、部活に打ち込んで楽しい思い出を作ったなどという人もいれば、打ち込める事など何一つなくて詰まらない生活を送った人だって居るだろう。
そう、所詮、俗に言う青春時代を青春していたと思えるかというのはその人次第な訳で。
俺には青春などと呼べる輝かしい時期なんて無いと思ってた。つーか、どうでも良いとでさえ思ってた。













気だるい気分の中、いつもの様に屋上に向かっていた。長い間ほったらかしにされている所為か、屋上へ向かう階段はやけに埃っぽい。

俺が所属する3年Z組は変人の集まりだ。そんな変人が集まる教室だからこそ、退屈こそはしないが、疲労度は普通の生活の何十倍にもなる。
だから、こうして時々教室から離れ、静かな場所で過ごすのだ。まぁ、結局はサボリなんだけどな。


ギィィィ、と重い屋上のドアを開けたとき、温かい空気と晴れた日の独特の臭いが鼻を掠めた。

屋上全体を見渡すといつもとは違った。普段なら、貸し切りの筈の屋上に見慣れない奴が一人。



『土方十四郎…くん??』


澄んだ声で俺の名前を呼んだ女。
見たことがあるような無いような奴だった。其処まで目立つ様な奴じゃなくて、かといって地味という様な奴でも無い。少し茶色掛かった髪の毛がさらさらとなびいている。


「…何で俺の名前、知ってんだよ」
『だって有名じゃん』


初対面である俺にニコニコと話しかけてくるコイツ。俺に対してこんな風に接してくる女は少ないから、珍しかった。
なんと言うか、不思議と興味が沸いた。




「お前、名前なんて言うんだ?」



俺らしくねぇと思った。自分から名前を聞くなんて。
こんな薄汚れた屋上なんかに好んで来る女っていう点でもそうだし、何というか雰囲気自体に惹かれるものがあった。
そう、最初はただの興味本位。



『永島 瞳』








08.07.29 のん



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