『ねぇー、カカシはいつになったら私と付き合ってくれるのさ』
「んー、名前が俺を護れるくらいになったら付き合ってあげてもいーよ」
『そんなの無理に決まってんじゃん』


ははは、とカカシは笑いながら、任務だからと去っていった。カカシはいつもそう。私が何度想いを告げようと無理難題を押し付けて断ってくる。カカシを護るなんてさ、カカシの方が私なんかより断然強いんだから無理に決まってんじゃん。やる前から無理と決めつけるのは良くないって誰かさんが言ってたけど、無理なものは無理。
そうやって私をあしらうくせに、カカシは優しい。迷惑ならはっきり拒絶でも何でもしてくれた方が私も諦めがつくのに、カカシはいつも笑ってる。そんな優しすぎるカカシだから、私はもっと彼を好きになってしまうんだ。


『はぁぁ…カカシのバーカ』
「誰がバカだって?」
『か、カカシ!?』
「忍が背後とられちゃダメでしょーが」
『えっ、任務は?』
「もう終わったよ」
『ふーん…』
「何ニヤけてんのさ」
『べっつにー?』


カカシは任務が終わると私の元にやってくる。まぁ前に私が、任務に行った帰りは私の所に来ること!なんて冗談紛いな事を言ったからなんだけど。でも、こんな下らない約束を律儀に守ってくれるカカシ。その優しさに自分は特別なんじゃないかって、つい自惚れてしまうんだ。


「まぁニヤけと笑いは違うけどさ、」
『うん?』
「名前は笑ってた方がかわいーよ」
『なっ、』
「はは、耳までまーっか」
『うっ、るさい!』
「じゃ、俺は報告書出してくるから」


ニッコリ笑ったカカシは颯爽と消えてしまった。心臓は鳴り止むどころか、逆に速さを増している。…不意打ちなんて狡い。可愛いなんて平気な顔で言われたらね、女の子は嫌でも期待しちゃうんだよ?でも、どんなに期待してもカカシの特別にはなれない。ならせてくれない。…こんな解りきっていた現実を再認識したぐらいで心が痛むなんて。やっぱり私はカカシに相当堕ちているようだ。


「ただーいま」
『…おかえり』
「どうしたのよ、元気ないじゃん」
『…誰の所為だっつーの』
「何か言った?」
『何でもないですよーだ』

「…はたけカカシ」
「っ!?」
『あ、あんたは…!』
「忍が背後とられちゃダメだって、さっき自分で言ってなかったか?」
『っ、カカシ!!』


突然カカシの背後に現れたのは、以前カカシが捕えた罪忍。確か獄舎に容れられている筈だったのに。それよりもカカシが危ない!そう思ったら反射的に身体が動いていた。


『っつう…』
「名前!?」
「おっと、お嬢さんを怪我させるつもりはなかったのになあ。いきなり出てきたら危ないよ?」
『あんたなんて…もう一度獄舎に戻るのがオチなのよ!!』
「ぐっ、あぁ!!」


持っていたクナイで男の足を刺す。男はもがき苦しんでいる所を、追っ手の者によって連れていかれた。私はと言うと、安堵と後から襲ってきた痛みに思わず倒れ込む。


「名前!!ったく…このバカ!!」
『っ、はぁ…バカとか、言わないで、くれる…?』
「バカとしか言いようがないでしょーが!!何飛び出してきてんの!!」
『カカシを、護る、ために…ね』
「結果的に名前が危ない思いしてるじゃない!!」
『でも…カカシが、無事で、何よりだよ』
「俺が無事でも、名前が無事じゃなきゃ意味ないんだよ…!」


カカシは全ての感情が入り交じったような顔で私を思いっきり抱き締めてきた。正直怪我した所が痛んだけど、此処は耐えることにする。


「…俺がさ、何で今まで名前と付き合うのを了承しなかったか、解る?」
『わから、ない』
「俺と付き合うことで名前を危険な目に遭わせたくなかったからだよ」
『そう、なの?』
「名前を失いたくなかったから、俺なんかと一緒に居れないと思った。でも、今は違う」
『な、にが?』
「今は俺が傍に居て、いつでも名前を護りたいと思う。だから、」
『うん、』
「俺と付き合って。それで俺から離れないで」
『カカ、シ…』
「名前が、好きだから」
『…うん、私も、だよ』


感覚がなくなり始めてる腕を無理矢理動かし、カカシの背中へと回す。弱々しい私の腕の力を補うかのように、カカシは更に力を込めてきた。傷口の痛みもカカシの為に負った傷だと思うと、何処か愛しささえ感じられた。




090819 りく


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