窓から外を見ると、眩しくて目を開けていられなかった。

窓際の席は涼しいから特等席だとはよく言うけれども、日差しが痛い。机の上に置かれた私の腕は殺人的日差しによって焼かれている。黒のハイソは光を吸収するから余計に熱い。


あーあ、怠い。何で夏休みが終わる今頃、学校で授業なんか受けてんだろ。
答えは明確、残念な成績をとっちゃったから。不振者補習は思わしくない成績をとった奴が参加するものだけど、夏休みが終わるこの時期にやられては、課題すら終わっていないあたしからするとやる気を削がれるだけだった。

課題に取り組むやる気が無いわけではない。むしろやる気は人にプレゼントしても余るくらいあるのだ、多分。じゃあ何故課題が終わらないのか。取り組むやる気と課題を進めることの出来る頭脳は全く別物だから。つまり、やる気だけがあってもどうしようも無いって訳だ。
ジリジリと私を攻撃してくる紫外線は、お昼が近付いてくるにつれ確実に強く痛くなっていた。先生が不振者でも分かるように数式を説明しようとしているけど、先生の説明は風のように頭を通り抜けていく。
彼氏もいない、打ち込めるコレというものもない、おまけに補習。こんな夏休みってどうなの?華の女子高生として正常じゃないよね。
はぁ。いくら溜息を吐いた所で現状は変わらないのを一番知っているのは私だ。
早く終わんないかな、あと何分?



規則的な振動。
スカートのポケットに入っている携帯が震えていた。



<アイス食いてーなァ、土方死ね>



右の前の前の席では、蜂蜜色の髪をした奴が机の下で携帯をポチポチ弄っているのが見えた。馬鹿だろ、と思いつつすぐに返信した。


<同感ー。でも、私土方じゃないからね>
<んなこたァ分かってまさァ。補習に呼ばれない土方しねよ>
<今頃家でくつろいでるんだろうね>
<あー、腹たってきやがった。暑いしよ>
<日差し痛いし、怠い>
<皆やる気ないから先生涙目じゃね?>
<沖田発言してあげなよ>
<面倒くせー、名前が発言しなせェ>
<無理。だって分かんないし>
<馬鹿がここにいまーす>
<その馬鹿と一緒に不振者補習を受けてんのは誰ですかー>
<土方>
<いないし!>
<つーか、あと何分で終わんだよ>
<30分位じゃない?>
<早くおーわーれー>
<私にいーうーなー>
<なぁ、帰りアイス買ってかね>
<いいね、でも私の奢りとか言わないでよ>
<土方の奢りで>
<じゃあ、アイス代請求しに土方んち寄らなきゃ>
<ついでに土方の部屋をブチ壊してやりやしょう>
<何しちゃう?>
<アイス食べながらゆっくり考えるぜィ>
<了解!>



返信がこない。
これまでかなりのスピードでメールをやりとりしていたので、何というか寂しいような。でも、了解!に返信してくるひとも珍しいか。
意識を授業に戻そうとした時、また携帯が震えた。




<…名前と馬鹿やる夏も悪くねーなっ>




頬っぺたが熱いのは絶対気のせい。日差しだ日差しっ。
携帯を閉じて時計を見上げると補習終了18分前。
何味のアイスにしようとか、土方はどんな反応をするだろうとか、沖田とどんな悪戯をしようかとか、考えるだけで胸がいっぱいになる。色褪せて映っていた補習中の教室の中もキラキラと鮮やかに見えた。
窓から外を見ると、やっぱり眩しくて日差しは相変わらず痛いけど、空は青い。

こんな夏休みもいいかもしれない、ペンを掴み直して顔を上げた。






091206 のん
下書きで眠ってた。季節感ゼロで申し訳ない←

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