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ポッドくんとはあの日以来きちんと話したことは無かった。
わたしは専ら恥ずかしくてだけど、彼にはどういう理由があるのかはいくら考えても分からなかった。
とにかくお互い話す時は常にぼそぼそとした声だし、ポッドくんは人気者なので誰かが必ずと言っていい程そばにいた。

だから、今回のチャンスにわたしは大きな衝撃、そして、不安を抱いている。


「ナマエ、ポッドと一緒なんだって?」

フィールドワーク。と続けてトウコはヒウンアイスを頬張る。
トウコはベルの幼馴染みであり、わたしの友人でもある。
成り行きでポッドくんのことを打ち明けて以来、よくこうして一緒に帰り、話を聞いてもらっている。
恋愛や噂話については彼女は最早スペシャリストだ。
さっきの情報だって、わたしが話したものではない。どこから仕入れてきたのか見当も付かない。

「まあそうだけど……」
「せっかく2人きりで沢山話せるチャンスなんだから!」

そう、フィールドワークは2人組で行われる。
くじ引きの結果、なんとわたしはポッドくんと一緒に1日過ごす人として選ばれたのだ。

「要はお互い緊張してるんでしょ?」
「多分……」
「だいじょーぶだってー。本番は緊張してるヒマなんてないもの」

確かにトウコの言う通りだった。
今から丁度三日後に行われるフィールドワークは、要は実技試験のようなものだ。
人気のタイプ……基本の3タイプ、ノーマルタイプ、ドラゴンタイプには希望者で成績がよかった人から順に入れる。

教室で皆に「オレはほのおタイプのジムリーダーになるんだ!」と宣言していたポッドくんが浮かんだ。

「……ポッドくんの足をひっぱらないようにしなきゃ」
「気合入れすぎないようにね?」

トウコはニヤニヤ笑いでわたしをからかった。
みるみるわたしの体の隅々が熱くなっていくのが分かる。

「そういうトウコも気合満タンなくせに!」
「あたしはチャンピオンになるの!こんな試験ヨユウなんだから」

いひひ、とでも言いそうな笑顔で言い切る。
トウコの腕は双子の弟・トウヤくんといい勝負で、トウヤくんもトウコと同じく、チャンピオン候補で有名だ。
トウヤくんと話したことはないけど、なんでももうミジュマルをフタチマルに進化させてしまったらしい。
トウコもポカブをチャオブーに進化させた。すごいことだ。

「お互いがんばろうね」

トウコがそう言ってくれたおかげで、少し不安が和らいだ。




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