アンフェア


「あいつ、おれのファンだって言ってた割にはおれが話しかけても全然嬉しがらねェし……よくわからないんだよな」
「あら、あなたが歌ってる間はうんとかわいい顔して笑ってるわよ?」
「は!?」

「笑ってた……」
「ね?」




「謎が多いよなおまえって。どこ住んでんだ?」
「ちきゅう」
「オイ」
「テゾーロはどこに住むんだ」
「……あ?」
「彼女を買い取った後。二人で住むんだろ?というか結婚。この町、でてくのか」
「バッ!?おま……!ケ、ケ、ケッコ……!?」
「ツバとんだぞ」




「いいか、最近ステラと仲良くしてるようだけどな、ゼッタイ彼女に惚れんなよ!」
「ツバとんだ」
「聞いてんのか!?」
「心配しなくても、俺だって馬に蹴られたくはない」




「わたし怖いの。希望を持つ事が、とても……。もし彼が離れていく事があったら、わたしはもう、絶望から立ち直る事はできないわ」
「君にとってテゾーロが光であるように、あいつにとっても君は、まちがいなく光だ。そう簡単に光から心を離す事はできない」
「……ありがとう。オーロは本当に優しいわね。モテるんじゃない?」
「…………傍から見た事実を言ってるだけだよ」

フフ、あなたがテゾーロの友達で、本当に良かった――――。








「待ってくれ!!金ならもうすぐたまる!!――――ステラ!!!」

「ありがとう。あなたがわたしの為に一生懸命働いてくれた事が、何よりも嬉しかった。わたしは世界で一番の幸せ者。――わたしは、心から幸せだった」

ありがとう――――……。

「ステラ……!!」








群衆の隙間から、最後に、笑顔の彼女と目が合った。

二人を幸せにする術なら持っていた。もっと早くに協力はできた。でもあの場所のあの時間を少しでも長く手放したくなくて――――何もせず、沈黙を貫いた。その静観によって、大切なものを失い、失わせた。

「俺は……友達なんかじゃない……」

大事なひとのしあわせをこころから願えなかった。



これは、俺の罪だ。


  
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