スポットライトテゾーロが国王ならば彼は大臣だ。
「――君の働きをテゾーロが褒めていた。これからもよろしく頼む」
明るい顔でスカートを翻していくあの女は、メイドはメイドでも全てのメイドを取り仕切る長ではなかっただろうか。タナカさんにとっては曖昧な記憶でも、オーロにとっては顔と役職を一致させた上でのごく自然な選択だったにちがいない。
「するるるる……」
「!」
「オーロ様。そろそろショーが始まりますので、お迎えに参りました」
「もうそんな時間か……君は本当に気の利く男だね」
テゾーロが歌うショーの時間、オーロはいつも監視映像の集められるコントロールルームを特等席にしていた。なぜ直接観に行かないのか、タナカさんが尋ねてみた事はない。しかし始終表情が欠落している彼の顔面を見ていると、熱気と興奮に沸くモニターの向こうは彼にはあまり似合わない場所なのだろうと思えた。
そんな深窓の大臣を迎えにあがったタナカさんは、ふと女が消えた先の廊下を見遣る。
「あの様な一使用人に、テゾーロ様がお言葉をお与えになるとは到底思えませんが……」
「“気分がいい”とこの場所であいつが呟いた。だったらそれはこの空間を管理維持する彼女達への賛辞だ」
そうやってオーロが地道な働きかけを繰り返すことで、王であるテゾーロのカリスマ性を高めているのだろう。
マスコットキャラクターの様な見た目とは裏腹に堅実な仕事振りが評価されているタナカさんは、光り輝くステージの裏で舞台を支えるオーロを尊敬していた。
「そういえばタナカさんに良い知らせがある。君の給金があがった」
彼は能力を正当に評価してくれる。
≪ ◎ ≫