ヘルター・スケルター


「今宵のショーはどうだった?」

このタイミングで鉢合わせするとは最悪だ、とオーロは内心ぼやいた。ショーによる昂揚感、アルコールによる浮遊感、かけ合わせれば気分はさぞかし最高であろう。そのまま打ち上げパーティで夜を明かしてしまえば良かったものを、なぜもう居住フロアにいるんだ、と愚痴は尽きない。
今ここに二人きりというのも最悪だった。テゾーロが上機嫌である程に、オーロは会いたくないと思う。

「……最高のショーだった」

言葉は間違っていなかった。なのに、車椅子を蹴り飛ばされ車輪が金色の壁にぶつかる。そのまま壁際に追い詰められると、トン、とテゾーロの拳がオーロの胸部に押し当てられた。

「笑え」
「…………っ」

ミシ、と肋が鳴る。

「おれが笑えと言ったら笑え!」

指輪の嵌められた箇所が特に痛い。骨に当たる。圧迫感に眉を顰めながら、オーロはすぐそこにあるテゾーロの顔を見上げた。

「笑い方を知らないと……何度も言わせるな……親兄弟だった者達でさえ見た記憶がないんだ。この顔はどうにもならない。許してくれ、テゾーロ……」

「………………っ嘘つきめ」


そういって君はひどく傷ついた顔をする。だから会いたくなかったのだ。


  
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