ディーヴァ


プライベートエリアの出入りが許されたカリーナは、ちょっとした冒険心と“今後の為の調査”も兼ねて塔内を一人で散歩していた。
と、そのとき。突き当たりの廊下を右から左へ、大きな荷物を運んでいく幾人もの使用人達が目に入る。引っ越しでもしている様な雰囲気だ。そのなかにタナカさんの姿を見つけて、カリーナは上機嫌な猫の足取りで近寄った。

「何してるんですか?」
「おやカリーナ様。オーロ様がガラク……お部屋をきれいに片付けたいと仰るので、こうして荷物を運び出して大掃除しているところなのです」

何か心境に変化があった様ですねェ、としみじみ呟くタナカさん。へェ〜。と洩らして人が流れてくる方角を見遣ったカリーナは、ひょっこり芽生えた好奇心に従ってみることにした。




「こっ、この皿は……!この棚も!ドレスも!絵画も!花瓶も絨毯も掛け軸もあれもこれもそれもどれも――……っ!お宝いーーーっぱい!」

目をベリーに輝かせたカリーナは、呆気にとられている車椅子の男――オーロに凄い剣幕で詰め寄った。

「だめですよ絶対!捨てるだなんて!きっと鑑定すれば価値が明らかになる物がごろごろ出てきます!捨てるより断っ然、“売る”べきですよ!ぜーーんぶ!」
「……その若さで、良い目を持っているんだな」
「え!?まっ、まあ、ちょっとだけこういった物に興味がありまして……ウシシッ」

慌てた様子で言い繕う彼女に首を傾げるオーロ。特に追及することはせず、まだまだ残っている山積みの骨董品たちへ視線を移した。

「わかった。君の助言に従うとしよう」
「はい!あ、わたしお手伝いしましょうか?」
「それは助かる」
「お給金の方は〜……」
「もちろん出そう」
「やった!」

あまり馴染むことのないと思っていた組み合わせに、意外に感じるタナカさんなのであった。


  
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