コミック・オペラ働いていた酒場の歌い手が失踪。ギャンブルに大負けしてヒューマンショップに連れていかれたんじゃないかと噂で聞いた。次の歌い手が見つかるまで歌わせてもらえることになった。ただのBGMに耳を傾けてくれる人なんかいないけれど。
最近、窓の外から店内を覗いているガキがいる。物乞いか。にしては可哀想な子供を演じるでもなくじっと中を見ているだけ。テゾーロを、見ている。もしかして昔カネを巻き上げた奴が復讐の機会でも狙ってるんじゃ。いつ見ても眉一つ動かさない表情を見ていると腹に一物あるとしか思えなかった。
そいつのことを探ってみたかったが歌い終わってお辞儀をしている間にすぐいなくなる。早く切り上げ裏口から出たときも後ろ姿すらつかめなかった。とにかく用心しねェと。
そんなある日、路地裏で見覚えのあるガキがぐったり倒れている姿を発見した。離れた場所には足跡のついた松葉杖。何があったかは明白だ。探ってみるつもりで善人を装った。
「おい、大丈夫か?」
こっちの顔に気がついた様子。
「理由は知らねェけど、もうあんまりこの辺りうろつかない方がいいぞ?」
牽制の意味を込めて近づくなと。怪しい反応があれば少し脅かしてやろうかと考えていた。ステラが嫌がるから本当に少し、だ。でもガキの口から放たれた言葉は予想もしないものだった。
「君の、ファンだ」
嘘だろ?
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