ルッチ:212cm 


「んっ!ん゙!ッふ、ぅゔ……っ!」

パン、パン、とルッチが飽きもせず腰を打ちつけてくる。何も生み出さない胎内を蹂躙する。ルッチは実の弟だ。その弟は兄を犯し、どちらが優位であるかを直接体に刻み込む。そんな事しなくたってとっくにしっぽなら振っている。白旗もだ。
だけど、弟の目的は、それだけじゃない。

揺さぶりながら、ルッチが腕をのばしてくる。
かんたんに命の灯火を消せるその手を────俺の首に、絡ませてくる。

「あがッ、!?」

ぐっと、力を込められれば、気道は狭くなり当然苦しくなった。体格差もあり首を覆うには片手で十分。ルッチは容赦なくギリギリと絞め上げてくる。決してあの日のことを忘れるな≠ニ告げるように────。






強さと才能がすべてのグアンハオで、弟は唯一の心の拠り所だった。キツい訓練も、弟と共に生き抜くためには兄として弱音など吐いていられないと自分に言い聞かせることでどうにか頑張れた。
弟はお兄ちゃん子だった。よく後ろを付いて歩いてきたし、すぐに褒められたがったし、俺の好物である桃がでた日にはかならず譲ってくれた。

────良好だった兄弟仲は、ルッチがめきめきと頭角をあらわし始めたことで変わっていった。

嫉妬だった。才ある者への。庇護の対象であるとすら思っていた血を分けた弟は、100年に1人の逸材と評されるほどの天才だった。まだ声変わりすらしていない年齢でCP9へ迎え入れられる程に……。

付いて来るなと拒絶した。俺を馬鹿にしてるのかと詰った。差し出された桃を思いきり払い飛ばした。そしてルッチがグアンハオを発つ前夜、俺は──────……弟の首を、絞めた。

「うっ……ううっ……」

寝込みを襲った。がむしゃらに、夢中で。いつのまにか泣いていた。悔しさと憎しみと────どうしようもない、愛しさが込み上げて。
両手を使い渾身の力を込めてギリギリと絞め上げた。絞めている……はずだった。ふと違和感に気がつく。硬い。触れている、その首が。直視せず絞め上げていた所為で気づくのが遅れた。それは六式の一つ、鉄塊という技が使われていると察しがついた。つまり弟は────。
全身にいやな汗が滲みながら、ゆっくりと視線を上げていく。僅かな月明かりの中、無感情な『目玉二つ』が、じっとこちらを見つめていた。ひゅっと喉が鳴る。弟は起きていたのだ。そしてずっと黙って見ていた。自分を殺害しようとする兄の姿≠。

「あ、あ」

急に恐ろしくなった俺は、慌てて部屋から逃げ出した。自分のしでかしたことに、そしてルッチの『目』に、恐ろしさと強烈な後悔が押し寄せてきて吐きそうになった。その日は結局、一睡もすることができなかった。
ルッチは報復してこなかった。それどころか誰にも報告すらしていないようだった。益々訳がわからなくなって。でも臆病で小心な俺は情況を把握するに至らず、ルッチの見送りもせず、弟とはそれきりとなった。



それきり、を願ってたんだけどなあ……。

「よ、……よう!ひ、久しぶり……」
「……………………」

エニエス・ロビーにて、感動の再会──……とはならなかったが。再び相まみえてしまった。弟が傑出した天才だっただけで、兄である俺も優秀ではあったのである。
ルッチと会いたくなさすぎて別の異動を願い出たのだが、大した理由を呈示できなかったので結局CP9に入れられてしまった。バッタリ正面から出会してしまったルッチに対し、視線が明後日の方向に泳ぎながら、苦し紛れに言葉を紡ぐ。

「背、伸びたな。なんだか少し……俺より、大きくなったか?」
「……………………」
「たまに聞こえてきてたぜ、君≠フ活躍。歴代最強なんだって?凄い奴とは思ってたが、そんなに凄いだなん、て、な……──────」

突然襟首を掴まれて、ルッチの自室まで引き摺って行かれた。人目につくやり方で拉致されていたし、わざわざそんな場所で死体をつくることはしないだろうと判断していた俺は、完全に情況を見誤っていた。逃げるタイミングを逸してしまったのである。
でも、想像できるわけがない。実の弟に……しかも殺そうとしたことのある相手に、体を暴かれることになるなんて。

それが、何年も継続して行われることになるなんて。






「──────……っは!が、!あ゙ッ!あ゙、ッぁあ゙……!」

首を絞められたことで、命の危険を感じた全細胞が活性化しているようだった。愚かにも子種を残そうとしたがっているんだろうか。バクバクと激しく動く心臓に血液を送られ、陰茎ははち切れんばかりに膨らみ、堪えがたい射精感が下肢を支配する。
卵子を持つ者は此処にいない。それどころか今、女のように押し潰され穿たれているのは自らの方だというのに。滑稽である。

「はっ、あ゙ッ!っへァ、ぁ゙、ぁあ゙っ……」

危険と認識していながら、脳内は不思議な昂揚感に包まれていた。幸福感にも似た安堵。酸素が薄まり意識が遠のく中、ゴリゴリと擦られる腹側から、じゅわりじゅわりと気持ちのいい熱が広がっていく。分泌された脳内物質が鎮痛剤の役割をこなしているのだ。
次第に視界がブレ、耳鳴りが響き、急な眠気に誘われる。

「ぁ、お゙っ……」

絶頂して意識を飛ばすと思った直前で、解放された。
ゲホ、ゲホ、と噎せながら呼吸を取り戻す。しかし息を整える間もなく、

「っンぎ──────ッ……!?」

どちゅんっと最奥部を突かれ、目の前がスパークした。中のどこかしらの膜が破られるような衝撃だった。
命の危機に瀕した直後の体は、外界からの刺激への感度がはね上がっている。脳内分泌されたドーパミンの効果が継続しているのだ。戦闘に於いてなら、集中力も高まってパフォーマンスが上がるというものだが。この情況では厄介な状態と言わざるを得ない。感じやすくなっている、ということだから。

早くに成長が止まった兄とは対照的に、弟の身長は今や2メートルを越えていた。比例して大きくなっていったブツ。ただでさえ苦しいのに、その成長のお蔭で毎度恐怖心は更新され、後ろの穴も慣れることがなかった。
そんな、入っていることが不思議でならない陰茎が奥の器官までぶつかる度、強烈な快楽が、脳を衝き上げる。

「ひ、ぎぅッ!?ぉ、!ひ……ッ、ぉぐ、ぅ、おぐっ、らぇ゙、ごりゅ、って、ぇ゙、〜〜〜〜〜〜ッ!んぁ、あ゙、は、ぁ、まっ、ん゙、ん゙ン゙ン゙ッ──────!」

宙を揺れていた陰茎が、ついに弾けた。先端からビュルビュルと白濁を噴き上げては、落ちて腹部を汚していく。それでもルッチは止まってくれないままだった。振動に合わせて、ビュッビュと断続的に精液が落ちてくる。
暴力的な快楽が、なけなしの理性を崩していく。

「や、だ、やめ、ぁ゙……ッ!ッひ、も、やら゙、ん、ぉ゙……ッ!?も、いぎだく、な゙、〜〜……ッ!ッは、ぁ゙、ん゙ん、ぁ゙、〜〜〜〜ッ!」

再会した日から数年経っても、ルッチがこの罰をやめてくれることはなかった。一生忘れるな≠ニ言われ続けるのかもしれない。
あの日、最も信頼されておきながら、手酷く裏切ってしまった罪≠──────……。







ナナシという男がいる。兄だ。卑屈で愚かでどうしようもない男だ。
幼い頃、確かに奴を慕っていた。拒絶され無視されようとも、男の意思などどうでもよかった。態度の変化には多少戸惑ったように思うが。どんな感情であろうと、意識の中心にこの弟がいる。それで良いと思った。

首を絞めて殺したくなる程に、情緒を乱す存在。

殺そうとしたくせに涙を流すバカな男。理解はできなかったが、なぜだか満足できた。それでも充分、悪くはないと────。


だが再会して、目を合わせない男に、何故か苛立ちが募った。恐怖心や罪悪感を抱いているらしいという事は理解した。しかし数年も離れていた間に、男は分別がつき過ぎるようになってしまったらしい。弟という存在は、心を掻き乱す程の存在ではなくなっていた。それどころかなるべく会うことを回避し、目も合わせず、フェードアウトさせていこうとしている思惑が感じ取れた。瞬間、とてつもなく腹が立った。愚かな兄の癖に生意気な、と。

だったら拭い切れないほど深く刻み込んでやる。

そう思い立って思うさま行動した結果、気づけば目線が遥か下になったその体を組み伏せていた。動きを封じ、口内を蹂躙し、服を剥いで後ろを慣らし姦通した。
初めて犯したときには血が出た穴も、今ではすべてをなんなく受け入れる。入るよう拡張したのはおれだ。触る度おもしろいくらいに肌が跳ねる。仕込んだのは、おれだ。今ではすっかり痛みを快楽に変換できるマゾができあがった。

兄はおれがこの行為に及ぶ理由を『憎しみ』だと思い込んでいるらしい。鉄塊で首を防御しない理由も、結局は大人しく犯される理由も、根源には罪悪感があるようだった。そんなもの持つ必要もないというのに。やはり愚かだ。
だが、そんな愚かしさが愛おしい。

「っは、ぁっ、ぁぐ、!あ゙っ、ふ、かッ……こぁ、れひゃ、ごわれ゙っ、ひゃ゙ッぁ、」
「これしきで音を上げるな。平気だ、お前ならまだイケる」
「む、り……!いっへ、ゔ、も、もぉ、ゃ゙え、らえ゙……」
「黙れ」
「おご────ッ!?」

どこが弱いかは知っている。数え切れないほど犯してきた体だ、手に取るように分かる。そしてどれだけなら耐えられるか、その頑丈さも知っている。かんたんには壊れやしない。

──────この男を、この世で一番上手く扱えるのはおれだ。
涙と鼻水と涎、そして精子を垂れ流し、白目を剥きかけている不様な姿の────なんと唆ることか。


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