マルコ:203cm 


キスなんかでよく『頭一個分の身長差』がちょうどいいなんて表現が使われる。身長によって頭の大きさは変わるので明確な数字があるわけではないが、俺とマルコの身長差を表すなら、多分ちょうど頭一個分になるのだと思う。それって結構、大きな差だ。


「も、お゙、やめっ、!おく、ぅゔ!ぁ゙!ごんごん、しな、れ、──ん゙ひッ!?ぁあ゙!んっ!ッあ、あ゙〜〜〜〜〜〜ッッ!?」

すぐに腰を引かせて逃げようとしてしまう癖があることを知っているマルコは、俺の両腕をまっすぐにさせてそれぞれを正面から掴んだまま、奥を突いてくる。尻はマルコの膝に乗っているようなもので、体を捻らせようと思ってもできない。ついでに言うと首も満足に捻らせられなくて、どれだけ顔を逸らしたくてもマルコの視線から逃れることができない。

マルコに触れられるのがきらいだ。いつもいつも今日こそは余裕をもって!と思うのに、そのかさついた手に、唇に、いつのまにか脳みそはドロドロに溶かされて、そのうち何がなんだか分からなくなってしまう。
マルコは乱暴なことはしてこない。でもじわじわと追い詰めてきて、いやだと言ってもやめてくれない。というかいやだと言ったことほどしつこくやってくる気がする。耳を集中攻撃とか、足裏をくすぐるとか。意地悪ではあるのだ。

「何言ってんだよい。ここ、突かれんの」
「んン゙────ッ!?」
「好きだろい?」
「ッぁ──……!はひっ!んァあ、あ゙ッ!」

首を横にブンブンと振るものの、こんな声をあげていては説得力などないかもしれない。

「そこ、らぇ、ん゙ぅッ!あ゙!あ゙!」
「素直になれよい」

好きなんかじゃない。ぜったいに好きじゃない。そこを突かれると、息が詰まって、心臓がひときわ暴れて、腹の奥底がきゅううと苦しく切なくなる。そのポイントをノックしてくる熱源は、狭い排泄器官にミッチリと嵌まる大きさで、出入りするたびに周りの臓器を押しのけていく。

頭一個分の身長差となると、各部位の大きさも異なってくる。手を合わせると、関節一個分は余裕で差があるし。もちろん、この話はペニスにまで及ぶわけで。
ほぐす前は指一本すら入れるのがむずかしい穴にどうして収まるのか分からないくらい、勃起したマルコのペニスは大きい。そりゃあもう。
その凶器に貫かれる恐怖は毎度ついてまわるもので、何度経験したって薄れることはない。入ってきた後だって、尻が裂けてしまうんじゃないかと常に不安でいっぱいだ。

「んくッ!はッ!ひゅ!ッぁ、あ゙!あ゙!も゙、い゙ッ……!」

頭が真っ白に塗りつぶされていく。限界が近いことを知らせると、マルコは腕の拘束を解いて、俺の頭の両脇に手をついてきた。腰をぐっとさらに曲げられて、結合が深くなる。ぐちゅりと音がして、覆いかぶさってくる影が濃くなる。

「ゔぅ……」

眉間に力を入れたとき、そこに柔らかくてあたたかいものが触れた。マルコの唇。キス、された。滲む視界の中で、マルコと視線を合わせる。捕食者の笑みを湛えた、憎らしい顔。

「可愛いよい」

────エッチするとき、マルコはよく可愛いと言ってくる。正直うれしくない。男だからというのもあるかもしれないが。マルコがそれを言うのは大抵、終盤も終盤。俺が理性も余裕も手放した、ぐちゃぐちゃに汚い顔のときだから。とても悪趣味だ。

「っん゙、────ぐッ!?」

角度を変えて、より深くを抉ってくるようにマルコが動き出す。

「あ゙ッうぅ゙!あぐッ!うっ、うっ、うッ!ぉ゙ぐ!?お゙!お゙!んッん゙ん゙!っは、ふ、!」

呼吸も儘ならなくなって、頭は酸欠。目の前はチカチカと眩しくて、口からは赤ん坊よりもだらしなく涎を撒き散らしている気がする。天地が分からなくなるほど頭の中はドロドロに撹拌されて、声の自制がきかない。
限界スレスレのこの瞬間がきらいだ。わけも分からず泣き出したくなる。赤子みたいに縋りたくなる。

「マルコっ、あ゙、あ゙ぁゔッ、ゔ!んん゙ッ!んぎッ!?あ゙ッ!マルコっ、マ゙、は、あぁ!ひっ!たすけ、あ゙!あぅ゙ッ、たすけて、マルコ、マルコ────……ッ」

挙げ句の果てに、この混乱を与えてきている張本人に助けを求める始末。頭の横にある腕にしがみつけば、汗を滴らせるマルコがふっと微笑む気配がした。

「……バカだねい────」

呆れているようでいて、甘く優しい蕩けるような声色。マルコ、マルコと譫言のように繰り返す俺の耳には、あまり聞こえてなかったんだけど。

「あ──────っ!あっ……!!っ〜〜〜!〜〜〜〜〜〜ッッ……!!」

花火でも咲いたみたいな光に包まれる。下腹部全体がこれ以上ないくらいに痙攣した。ギュウッと中を引き絞られた後は、腹筋がビクビクと小刻みに震え続けて。その収縮に促されてか、マルコの熱も弾けて、奥深くに注ぎ込まれるのを感じた。ゴムをしてるから、本当の奥には行ってないだろうけど。ただでさえいっぱいいっぱいで苦しかった中が、もっと苦しく、熱くなる。

俺のペニスは芯を通したまま、先端からは何も出てきていなかった。それでも腰全体がじわじわと熱くなって、風呂に浸かったみたいに気持ちよくなる。ぼんやりする頭で、口を開けたまま、ハクハクと金魚みたいな開閉を繰り返した。

「んっ……、」

ずるりと抜けていく感触。ぶるり、と背筋が震えた。ベッドに手足を投げ出したまま少しも動けない。動きたくなかった。このまま眠れたら幸せだな、と感じていた……────のに。

「もう少し、気張れよい」
「ぇ……ぁ゙、!?は……っ」

ゴムを取り替えたマルコに、また腰を引き寄せられた。慌てて腕を伸ばして後ろの穴を塞ぐ。

「マル、コ、も、もう今日は無理……っ」
「……………………」

なぜか長いこと凝視されていたように思う。熱の籠もった目で。

「…………そうかい」

マルコが腰から手を離してくれたことにほっとしたのも束の間。

「────!?」

俺の足を掴んで持ち上げたマルコは、そこにちゅっと小さくキスをした。くすぐったさに指先を丸める。何してんの、と問いただす前に、マルコがまた足にキスをした。今度はくるぶし辺りに。
マルコの含みある視線がすっとこちらを向く。慣れない箇所へのキスに、なんだか気恥ずかしさが込み上げてきて足を引っ込めようとした。途端、ぎゅっと、優しい加減なのに頑固な意思を持った手に阻止される。
ちゅ、ちゅ、と、だんだんと上に位置をズラしながらマルコはキスの雨を降らせてきた。その度に甘やかな疼きが腰にまで響いてくる。足首、ふくらはぎ、膝、腿の内側────……。足の付け根まで来たところで、マルコの動きが止まった。再びマルコと視線が結びつく。でもマルコは何も言わなかった。わざとだ。待っている。じりじりと焦らされている……────。

このときにはもう、俺の息は走りきった後みたいに上がっていて、随分と熱の籠もった吐息を切れ切れに洩らしていた。顔に集まった熱。肌、すごく赤いんじゃないだろうか。

「……マルコ」
「ん?」
「…………マルコ、……」
「言ってくれなきゃ、分かんねェよい」
「、………………」

悔しい。でも、押し寄せる衝動に抗えない。意を決して口をひらく。


「マルコ、……気持ちいの、欲しい……」


「………………………………」
「…………?」

プライドを脇に置いて頼んだのに、妙な沈黙が降りて。不思議に思いながらマルコを見遣れば、マルコは額を手で覆って頭を抱えていた。

「なんだよっ」
「あー…………何でもない」

ぜったいに何かあった返事をされる。気を取り直す仕草をしたマルコが、顔面に近づいてきた。唇が、寄せられて。文句は忘れてやることにして、静かにキスを受け入れる。

「ん、ふ……っ」

緩やかだったキスは次第に深さといやらしさを増していって。舌と唾液を絡められながら、後孔に再び、マルコの杭が打たれた。

「ふ、ぅ……、ふッ!んっ、〜〜〜!んん゙ぅ、ン゙〜〜〜〜ッ……!」

二度目の挿入はすんなりだったものの、余韻の残っている身体は、内側の襞を擦られるだけでさっきよりも強い快感を拾い上げる。舌の脇腹をなぞり上げられながらゆっくりと抜き差しされるだけで、危うく意識がトビそうになった。


「────んあ゙、あ、あっ!ぁ゙ひ!?、はっ!はッ!はア゙ぁッあ……!いぅ゙ッ!ぉ゙ひ、────ッお゙……!ん゙、ん゙ん、〜〜〜〜〜〜〜ッッ!」

その後、俺は射精なしで何度もイカされて。返事ができないほどくったりしたところで、ようやく解放された。
後ろの穴はしばらくの間、ぽっかりと口を開け続けていたらしい。なんとも酷い有り様に仕立てあげたというのに、当の犯人はというと────。

「ナナシが可愛すぎるのがいけねェよい」

反省の色は微塵も見られなかった。
だからお前に触れられるのはきらいなんだ、パイナップル野郎め。


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