マルコSS詰め (同一主人公ではない)パイナップル/船員「ほいマルコ、お土産」
船に残って仕事するから。と、今日の上陸はひとまず見送った白ひげ海賊団一多忙な働き者へ、屋台で一目見て購入を決めた、葉色の元気なでっぷりトゲトゲした果実を書類のひろげられた机上にでんっと置く。まだ切ってもいないのに甘い香りがふわりと漂った。メガネ越しのマルコの目がすこしだけ見開かれたのを見て、成功を確信する。
「……なんで」
「いやァー。これ見た瞬間マルコに買ってかなきゃって使命感に駆られたんだよね」
「おれの好物、知ってんだよい」
「え?」
「ん?」
マルコの好物?ジョーク……ではないですねマジですね。あ、純粋によろこんでる。急遽路線を変え、うんうんもちろん知っておりましたとも、そうですとも、だからうれしがるかと思ってほらプレゼント。と取り繕ったものの、探るような目にじっと見つめられ、口角が引き攣ってしまっていたかもしれない。マルコが両肘ついて目の高さで手を組み、そして。微笑った。ひえ。
「どうして買ってきた。正直に言ってみろい」
「パイナップルシルエットといえばマルコだろうと思い立ちました」
「正直でよろしい」
おや褒められた。
「から、ご褒美だよい」
「あイダッ」
デコピンされました。けどマルコはこのあと美味しそうにモリモリ食べていたし、ご機嫌そうだったし、プラマイすればプラスの方だったはずじゃあないんですか。どうなんですか。
オレにもちょっと分けて。と切り分けられた実の一つに手をのばそうとすれば「手を洗ってこい」とぺちんって叩かれた。はーい。
ビギナー/船員「能力者の先輩にご相談です」
「なんだよい」
「不肖わたくし、先日晴れて悪魔の実の能力者と相成ったわけですが」
「その口調でつづくのかい」
「落ちれば沈む海に360度囲まれているかと思うと急に船での生活が恐ろしくなってきました。このままでは精神疾患をも起こしかねません。震える仔鹿にアドバイスをどうぞ」
「未来のことをあれこれ考え過ぎないことだな」
「マルコは未来のことをあれこれ考え過ぎてそうな人なのに……?」
「ま、もしものときは家族がだれか助けてくれる。おれも、家族のだれかに何かあればすぐに助けるつもりでいるよい」
「マルコも能力者だろ?」
「方法ならいくらでもあるだろい。ナナシはあそこ(甲板)で堂々と眠ってる誰かさんを見習うといいよい」
「エースを参考にするのはちょっと……」
よんだー!?
よんでなーい!
恋する少年/船員若手「恋と憧れの違い、わかるかよい?」
細胞という細胞から勇気のかけらを振るい集め一大決心をして実行に移した告白は、受け入れも拒まれもせず、しかし致命的な一打をもって脆くも砕かれる。好きです。好きなんです。たしかにはじまりは憧れからだったかもしれませんがこれはまちがいなく恋なんです。そんな。勘違いだと決めつけたようなバカにした質問。しないでくださいよ。
「……それくらい、オレにだってわかりますよ、マルコ隊長」
「時間を置いてみるといいよい」
「今は無理ということですか」
「……ああ」
「いつならまた、告白してみてもよくなりますか」
「ガキは聞きたがりだねい」
「いくつからガキじゃなくなりますか。マルコ隊長にとって」
「…………」
そういう所がガキなんだって顔してる。そんな目、しないでください。違う。違うんです。こんな風に話したかったわけじゃない、なりたかったわけじゃない。なのに腹の内側がぐつぐつごとごと煮え滾る。
「おとなには、ガキを守る義務があるんだよい」
この涙は、あなたの所為なのに。
(あるコックと船医の会話)「はっきり断ってやればよかったんじゃあねェのー?諭すんじゃなくってさァ」
「おとなは、ズルくて臆病なんだよい」
(…………おや?)
◎