ロブ・ルッチとドロドロSEX !性的表現あり



「はァ、は……!」

カーテンも閉め切った暗闇の室内。ホテルのベッドは経年劣化によるものか、上質そうなボックススプリングボトムだというのにギシギシと異音を立てる。その端に足をゆかにおろして座り、背中を丸め、目も気も霞みながら己の陰茎をうらめしげに見据えていた。擦っても擦ってもおさまることのない熱。諜報部員は訓練により薬物に対するある程度の耐性を獲得している。だというのに、この症状は一体。海王類でも想定して作られたのではないかと思う程のつよい反応。思わず舌打ちばかりが洩れる。

────コンコン、コン、コンコン。

最悪の音がした。決められた数のノック、ドアから告げられる来訪者。ルッチだ。



ガチャと開けたドアの隙間は、向こうからは顔の半分しか見えないであろうくらいの狭さ。

「遅い」
「ちょっとうとうとしてたんですよ。で、なんです?」
「早朝5時に出発する」
「……わかりました」

なんてことはない、任務を終えたこの地から離れる、その時刻の報せだ。ちなみに年下の彼にも丁寧な言葉遣いを用いるのは、己の短気な性格をすこしでもどうにかしようとしている努力の一端である。
用が済んだならばもういいだろう。さっさとドアを閉めようとして、叶わなかった。見下ろせば、わずかな隙間に挟まれたどなたかのつま先。どなたって、ルッチしかいないわけだが。

「まだ何か?」
「………………………………」

廊下は明るく室内は暗い。ルッチからこちらの姿はよく見えないだろうが、嗅覚は別だ。早く離れたい。────そう、切に望んでいたにも関わらず、

「っ、おい!?」

あろうことかルッチはドアをぐいと開き、部屋へ押し入ってきた。ドアが閉まり暗闇にとざされる直前、なぜか手首を捕らえられる。

「──任務にミスが生じていたなら、」
「(、)」
「それも、正確に把握しておかねばなるまい」
「……なんのことですか……」

部屋の中は真っ暗だ。まともに互いの目鼻も見えやしない。カーテンの隙間から光が一筋洩れていて、けれどそれも暗闇を引き立たせるものにしかなっていなかった。

「報告するかどうかはおれが判断する。今回の責任者はおれだ。なにを隠してる?言ってみろ」
「隠してません。こちとら眠いんですよ、さっさと出てってくれません?」

うっかり舌打ちが洩れそうになる。溢れてくるのは焦燥だ。つかまれた手首をひき抜こうと腕を振る。しかし逃れるどころか、逆にもう一方の手首も捕らえられ、バンザイの形で壁へ押しつけられた。痛い。

「なんのつも、り、…………」

言葉尻が消えたのは、股間に違和感がおとずれたからだ。なにかがそこに当たっている。輪郭線すらわからない視界とはいえ、触られるのはまずい。言い訳のしようがない程に盛り上がっているのだ。暗い部屋に二人きりという状況、万が一にもあらぬ誤解が生まれてしまうのは御免だった。
拘束からいち早く逃れるために身をよじろうとして────……股間にあった違和感が、明確な意図をもってうごきだすのを感じ、体が硬直する。

「ちょ、……何、して……────!?」

股のあいだに割り入れられていたのは、ルッチの脚。その膝がどういうわけか、布越しにグリグリと局部を刺激し始めたのだ。燻っていた熱がじくじくと鈍い痛みをともなって膨れ上がり、堪らなくなる。「ふざけるな」「なんの真似だ」「おい、やめろ」「ルッチ」。暗闇からの返事はない。体から力が抜けていく。

「ぐっ……それ、やめ……!ルッチ、……おい、ルッ、!っ……!ッッ〜〜〜!!」

グリ、と一際つよく押された瞬間。限界を迎え、脚をがくがくと震わせながら達してしまった。……服の中に、である。

「はー、……はーっ、……っ、」

着替えはあるが、下着の替えは用意していない。最悪だ。苛立ちの矛先は当然、正面にいる男へと向かった。

「てめェ……」
「クスリか。間抜けめ」
「っ、……!」

ようやっと喋ったかと思えば核心をつかれてしまう。ぐうの音も出なかった。とはいえ、こんなことまでされる謂れなどない筈だ。大体にして、催淫剤を盛られてしまうことより、同僚の男に手を出してイかせることの方がよっぽど他人に言えないことをしでかしているのではないだろうか。
「変態野郎」と罵ってやろうとして──、それもまた、叶わなかった。唐突に腕をひっぱられ、部屋の奥へと進んで行かれる。そうしてぼんやりと浮かび上がって見える白いベッドシーツの上へ無造作に放られることになった。

ギシ──────……。

ルッチまでもが乗り上げてくる気配を感知する。

「……まさか、俺を襲う気か?」
「そのまさかと言ったら?」
「…………お前が俺を好きだったとは知らなかった。今世紀最大の衝撃だ」
「お前の、弱った姿を見て……。思いの外気分が向いた。それだけだ」
「へー。男にも反応する奴だとは知らなかった。ところで、クズってイメージ通り過ぎません?」

最後の悪足掻きとばかりに指銃などを放ってみたが、成果は得られなかった。







「──────ひっ、ンッ!あっ、あっ、っぉ、ぁ゙ッ〜〜〜!?」

脳みそごと揺さぶられて意識が半濁する。合間合間にひびいてくる、ギシ、ギシと悲鳴に似た音。
正気の沙汰ではないと思っていた筈のこの交わりに、いまや頭の中身はすっかり蕩かされ、攪拌され、パンケーキミックスのタネの様にどろどろになっていた。クスリの効果、だけではない。おそらくルッチは相当うまい男なのではないだろうかと思われる。彼が持つ能力──その獣の姿から、手荒に扱われる様を想像していたのだが。予想に反し、一つひとつの行為がこまやかで丁寧。シロップ漬けの様に甘やかされたかと思えば、熱烈に喰らいつかれ、揺さぶられて。緩急のリズムに頭がついていけず、認めがたいが、翻弄されてばかりいた。何度か理性の手綱を手放しそうになって、その都度恐怖にからだを慄わせている。

「……脚をどけろ」
「っ、ん、……ぅんっ……、まっ、て、まて……、すこし、まってくれ……」
「…………」

ルッチの腰に足を絡めたままうごけない状態にさせた。低い音程、抗議の声が降ってくる。当然か。けれどすこし待ってもらわないと、とんでもないことを口走ってしまいそうで。体内に埋め込まれた熱がもどかしそうに脈を打つ。その微細な反応すら感じ取ってしまう鋭敏な感覚が呪わしい。

「────いい加減にしろ」
「っぁ、……ぅ」

強引に脚をほどかれてしまった。そのままうごき出されるかと危惧したが、一度ナカからずるりと引き抜かれていく。ふるっと身を震わせ、ほっと息を吐いたのもつかの間。肩を鷲掴みにされて体を反転、あっという間に俯せの状態にされてしまった。

「んっ、ふぅ……、く……!」

腰を上げさせられることもなく、ふたたびみっちりと埋め込まれていく。内臓を押し上げられる気持ちわるさと、柔い内壁を擦られ背筋を這いあがる甘い痺れ。この体勢ではもうルッチのうごきを止める術などなかった。その事実に戦慄しているとも知らず、ルッチはぺちゃんこに潰そうとしてくるかのごとく、腰を打ちつけてくる。

「ん!うあっ!あっ、やめ、や、ひぐ、ぅっ」

ギシ、ギシ、ギシ、ギシ──、軋むスプリング。すでに何度かイかされていたし、直接出されてもいた。潤滑剤など不要だとわかる程にぐちゃぐちゃと音が鳴る。クスリによって強制的に興奮させられているこちらの身はともかくとして、こいつ──ルッチは、いつになったら満足し終えるのか。

「ひ、ぅ……いぎ!?」

挿入される角度が鋭くなった。たったそれだけで一突きの威力が段違いに変わる。目の前で瞬くフラッシュが、つよくなる。

「あっ!あ゙っ!ンあ゙、アッ!」

腹の深部が熱湯でも注がれた様に熱くて熱くて仕方がなかった。逃れたくとも、ベッドに密着した腰にはもう逃げ場所がない。破いてしまいそうなくらいに思い切りシーツに爪を立て、握り締めていた。かっぴらいた目からはぽろぽろとひっきりなしに涙がこぼれてくる。

「もっ、もぉ……、やめ……!いらなぁ、ァ゙!も゙、いらな、からあ!かあ、だ、おかしっ、おかひくな゙っ……!……!!」

不意に、肌のぶつかり合う音が止む。懇願を聞き届けてくれたのかと一瞬は思ったのだが……。
背後から肘を持ち上げられ、腰にひびく声で「膝で立て」と指示された。思考能力の落ちた頭に『膝立ち』の文字だけが刷り込まれる。どうしてかこれでもう終わってくれると思い込み、繋がったまま、どうにか頑張って上体を引き摺り起こした。しかし肘は解放されることなく。どころかもう一方も捕らえられ、胸を反らす形で固定される。

「────あっ」

どちゅん、と衝撃がきて。後ろ手に拘束された姿勢のまま、律動が再開された。今までの衝撃とはなにかがちがう──と、直感が危険信号を点す。

「か、っぁ、はヒュッ……」

剛直が潜り込んできた最奥。そこはこれまでとは異なる領域、突かれる度に強烈に収縮してしまうポイントの様だった。この不安定な体勢が、深い地点までの侵入を許してしまうことになった原因だろうか。前へ倒れようとすれば拘束の力は強まり、その間にも容赦なく抉られる。ぐちゅんぐちゅんと穿たれる。手綱が、すり抜けていく。

「とまっへ……とま、……あ、あ゙……!い゙あっ、あ゙、はぃ、はいって……らめ゙な、とこっ──────んぐッ!?!ン、あッ!やっ、や゙ら、やっ!も゙、ぎもぢぃのや゙ら!るっちッ!ィ゙、るっち、ンッ、はっ、はあ、ぁ゙、ぁ゙、んひ!?あ……ぎ、いぅ゙っ、んン゙ッ!」

奥の壁に当てられるごとに、宙を揺れる陰茎から薄い精液がぴゅっぴゅと噴き出している気がした。痛い。苦しい。なのに気持ちがいい。


「ナナシ」


「──────……ッ!?くっ……ひ、」

前触れもなく耳許で囁かれた瞬間、疲弊していた筈の体にぞくぞくと電気が駆けめぐり、下肢がおおきく痙攣した。やめろ、そんな呼び方。まるで恋人同士みたいじゃないか。

「ッア゙!ッッ──────……!!」

腹部全体がきゅううと引き絞られ、何度目かの放埒をする。同時に、どろりと、とっくに満タンになっているナカへ新たに注がれていく。その生々しい感触を、意識の端で感じていた。







「ケダモノ……ひとでなし……ちんこもげてしまえ」

ルッチはこちらを振り向き、半笑いを寄越しただけだった。あれだけ喘いでいたくせに?と言われた様で非常に腹が立つ。

早朝。というにはまだ早い、未明。いつ意識を飛ばしたのかも覚えていないが、随分長いこと放してもらえなかった様に思う。その上で予定どおり、出発準備のために早い時間に蹴り起こされたのだから、気分はどん底の最底辺だった。さらに憂鬱になった理由が、裸のまますっかり身綺麗にされていたことだった。ばっちり後処理までされていたのである。ばっちりということは勿論、……尻の中も。しかも隙のないことに、新しい下着まで購入されていた。当然の償いだと思う一方で、すべて目の前の男によっておこなわれたことだと思うと、どうにも薄気味わるく、据わりのわるさを感じてならない。

「いつまで寝てる気だ」
「痛いんですよ……。腰が。とても」
「先に行くぞ。それとも、おぶっていってやろうか?」
「はーー。昨夜の記憶消したい!」

消すどころか、具合がよかったと妙に気に入られてこのさき何度も上書きが繰り返されていくことなど────、このときの俺はまだ知らない。


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