花巻満

花巻くんは、ちょっとうっかりさんだ。
一日に一度は必ず転ぶし炭酸系の飲み物をあければ必ずブシャーって吹き出してるしテストでは名前を書き忘れるし忘れ物はしょっちゅうだし、なんというか…ドジなのだ。ドジ巻と呼ばれて親しまれるほどに、ドジなのだ…。そんな花巻くんと、先生に頼まれふたりきりで修学旅行の冊子づくりをしている。花巻くんはホチキスを自分の指に突き刺してしまいそうになったり、紙を床に落としたり、相変わらずのドジっぷりだ。今日中に終わるだろうか…

「…ご、ごめんなみょうじさん」
「え?」
「さっきから俺ドジばっかで…進まねえよな、こんなんじゃ」
「そんなことないよ。焦らずゆっくりやろ?」

プリントを取ろうとしたそのとき、花巻くんと手がぶつかった。花巻くんはすぐに手を振り払い勢いあまって椅子から転倒した。そ、そんなにわたしの手がぶつかったのいやだった!?慌ててわたしも椅子から離れ大丈夫?と手を差し伸べた。花巻くんは少し躊躇したあとわたしの手を握り、一度は立ち上がったのだがまたすぐにふらついて、わたしの手を握ったまま再び転倒した。握ったままなので、もちろんわたしも一緒だ。

「いてて…」
「ご…ごめんみょうじさ……っ!?」
「わたしこそごめんね…あそこでわたしが踏ん張れば転ばずに済…」

起きようとして気づいた。はたから見たらまるでわたしが花巻くんを押し倒しているような体勢になっていることを…。な、なんだこのちょっとハレンチな漫画にありそうな展開は…と思いつつすぐに起き上がり椅子に座り冊子作りに戻った。花巻くんも慌てて椅子に戻り冊子作りを再開した。うう、さっきのことがぼんやり頭に浮かんで離れない。なんか恥ずかしかった!なんか恥ずかしかったよさっきの間!!

「みょうじさんって、さあ」
「ん?」
「彼氏…いるの?」
「…いないよ」
「そっか…」

…恥ずかしいって思っているところへなにその追撃!彼氏なんかいないよ欲しいくらいだよ募集中だよ!!そういう花巻くんは彼女いるの!?…いるんでしょうね可愛い彼女がね!キミのそのドジを見ても「もぉ満くんてばドジなんだから〜」とかって軽く流してそうな…包容力のある可愛い子とか…きっといるんだろうね…

「あ、終わっちゃったね」
「マジ!?ほとんどみょうじさんがつくっちまったな…ごめん」
「いいよいいよ。じゃあこれ職員室に持ってこ」
「いや!俺持ってくからみょうじさんは帰っていいよ!」
「大丈夫だよ持ってくくらいすぐ終わるし…」
「いや!それじゃあ俺の気が…っわあ!」

花巻くんがなにもないところでまた転んだ。その際、なにかに捕まろうとしたらしく、なぜかわたしのスカートの中に手をいれパンツの両端をつかみズリュウウとわたしのパンツをズリ下げ顔面からバターンと床に倒れた。…?この一瞬で一体なにがおこったのか、わたしはすぐには理解できなかった。

「ってぇ、久々に顔面からいっちまった…ん?俺なんか掴んで…え?」

いくらドジだからといって、こんなドジの踏み方ありえるだろうか。転ぶ拍子に目の前の女子のパンツをズリ下ろすなんてことが。狙ってやったんですといってくれたほうがまだ理解できる気がする。でも…花巻くんは、これを素でやってのけるほどドジなのだ…

「…あ…みょうじさん!ごめん!俺そんなつもりじゃ!」
「花巻くんはさ」
「はい!」
「本当に…ドジだよねぇ!」

仕方ないとわかってはいつつ、どうしても異性にパンツをズリ下ろされたという恥ずかしさを抑えきれず花巻くんの頭を踏みつけた。何度も何度も、彼がなにかいってもやめなかった。

「こんなピンポイントでパンツ下ろすとかありえねーだろ!ドジッ!ドジ巻ッ!」
「ちょっ、ちょっと、みょうじさん!」
「ドジ!ドジ!バカ!ドジ!」
「ス、スカートの下…見えてるから!」

…そうだ、パンツズリ下ろされたんだからスカートの下なんも穿いてないんだ。そして花巻くんからはそれが見えるんだ。衝動的に彼の頭を踏みつけまくってた間、ずっと…丸見えだったんだ…下が!!わたしは冷静に、彼にズリ下ろされたパンツを穿きなおしたあと、花巻くんにアイアンクローをかました。

「いっでえええええ!」
「ごめん」
「やっ…やめてくれマジで痛いから痛ッだあああ!」
「ごめん」

口では謝りつつ自分の気が済むまで花巻くんを苦しめ続けた。はあっ、だって、花巻くんがいけないんだよ!!ドジだからって女子のパンツズリさげていいわけないんだからね!ましてやその下のなにも身につけていない状態の股間を見ていいわけないんだからね!!いやそれはわたしが見せ付けたようなモンだけど!でも!でも!…ようやく気が済んで、花巻くんの顔から手を離した。

「…ごめんね花巻くん」
「いや…俺も悪かったし…いいって」

…花巻くんはドジだけど、こんな風に優しい一面もあるからみんなから親しまれているのだ。愛すべきドジ、花巻くん…

「なんつーか…みょうじさん、紐パンとか穿くんだな。意外っていうか…こう…グッときたよ」

その余計な一言さえなければキレイに終わることができたのにこの男は!わたしは黙って花巻くんに再びアイアンクローを喰らわせた。ドジ巻?違うとんでもないエロ巻だよこいつは!


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