「なぁーんか夢みたいっス。まさかキッチンで、……しかもこういう格好したブン太さんとヤれる日が来るなんてさ」

「―――…っ、ンン……ッ!あっ、」


ブン太さん自ら身に纏ってくれた、全くもって“けしからん”代物。

エプロン自体には別にそんなイメージなどないが、(むしろ真っ白のそれは清楚なイメージを出していたが)俺が希望した着方をされていればその真逆である卑猥なブツだとしか思えない。

そんなものを脱がせるなんて勿体無いことはせず、両袖口の間から自分の手を滑り込ませた俺はブン太さんの胸元を好き勝手に弄り倒していた。

そして歓喜の言葉を呟きがら背中に唇を落とし、後で怒られるだろうなとは簡単に予測出来たけれど全く自重はせずたくさんのキスマークを残す。


けど仕方ないと思う。

だって嬉しかったんだ。
―――それほどまでに。





ブン太さんにとってキッチンは聖域であり、仕事場程ではないにしろ用途に見合った用具が一式以上も買い揃えられブン太さんの天才的な料理の腕前をいつでも披露出来る場所となっている。

大事な場所だから、俺がそれとなく雰囲気を作り情事に持ち込もうとしても容赦なく一刀両断。


だけど今日のブン太さんはそうじゃなく、
あんな台詞も言ってくれてこんな格好もしてくれて、さらにこの場での行為さえも黙認してくれて、
……本当にワケが分からない。

(一体全体ブン太さんの心境に何が……?)



まぁそんな変化が訪れたのをいいことに俺は思う存分甘えちゃっているワケなんだけれども。














「っ、うぁ……ッ!あっ、ん…んっ……、や……っ!」

「や?でもブン太さんのここ、しっかり硬くなってますよ?」


触れる前は何の反応もなく、肌と同じく滑らかで真っ平らだった胸の突起。

けれど指の腹で押し潰したり指先で転がしたり、指と指で摘んだり捏ねたりを繰り返しているうちにそれは自らの存在を主張し始めていた。



ビクビクと跳ねてプルプルと小刻みに震えて、
俺の愛撫に一々反応を示し攻め上げる快楽の波に耐える。

そんなブン太さんの姿もやっぱり可愛くて、俺の加虐心が頭を出し始めてしまった。


最も、俺の加虐心とやらにはブン太さんを痛めつけたいだなんて思考はない。

……ほんのちょっと。
あとほんのちょっとだけ。



羞恥に身を犯される可愛い恋人の姿を堪能していたいだけである。










「ン…っ!…ふ、……お、い、…んんっ、……いい加減に、しろってば、」

「んー…?」

「――ぁッ、あぁ…ッ!…〜〜っ、…そ、こばっか…、やだ…っ!」

「―――ッ!?」


や、“やだ”って……。

やだって何!?
可愛すぎるにも程があるだろっ!

久々なんだしそんな煽られたら優しく出来ないじゃんっ。
もうっ、ブン太さんの馬鹿!













「―――そんなにイヤなら仕方ないっスね。……じゃあ、今度は耳舐めてあげます」

「ひぁ…っ!?、――…ぁあッ、ンっ、…〜〜ゃ、やぁ…っ」

「……ブン太さん、可愛い」

「〜〜や、っあ、……ンンっ、!や、…め……っ、んぁっ、あっ、あっ、」


―――…ブン太さんの性感帯は二つあって。



一つは胸。
もう一つは耳。

胸も相当だけど、特に耳はヤバいらしい。


ちょーと耳の輪郭を舐め上げたり穴ん中に舌をねじ込んだりすると、今みたく身体を跳ねさせ嬌声を吐き出し続ける。

元々弱かったけれど、俺が中学時代から今日までに散々イジメてきてしまったせいですっかり現状のような状態へと至っていた。










「ホント、ブン太さんって耳ダメだよね。もしかして前世は猫かウサギだったんじゃないっスか?」

「〜〜て、めっ!、やめろって言ってんのに……!」

「またまたぁ〜。ンなこと言ってブン太さんすっげぇ感じてんじゃんか。―――…ほら、前もすっかり元気になってるよ」

「ひぁっ、!」

「俺が弄りまくったせいっスね。責任持って、たぁーっぷり愛してあげますから」

「!?い、いいから別にっ!」

「なんか知んないけど今日のブン太さんすっげぇー頑張ってくれてるし。俺も応えなきゃね」

「だ…っ、からいいって言ってんだろぃ……っ!」

「……でもその前に、」

「あ…?」

「ごめんね」

「……?」


きっと疲れてたんだ。
社会人なんだもん。そりゃあ学生の俺なんかよりも疲労が溜まってて当然だよな。


……光の奴も言ってたけど、せっかく早く帰って来ることが出来たんだから普通は休んでいたい筈。

なのにそんな疲れてる中で飯を作ってくれて風呂も沸かそうとしてくれて。





感謝はされても、俺から自分勝手な暴言を叩きつけられる筋合いなんかない。


ブン太さんは何にも悪くないのに逆ギレして、

そもそも節操なしにサカった俺が悪いし、



だから、…―――。















「すみませんでした」

「……………」


謝罪を口にする俺を、頭だけ振り返った状態で見つめ続けるブン太さん。

叱咤の言葉も宥めの声もなく、その薄紫の瞳に俺の姿を映すだけ。



……そうしてしばらく経ったのちに吐き出された言葉は、
溜め息混じりの文句だった。










「ったく、……今更、そんな大人しくなるなっての」

「……すみません、」

「だから謝るなっ!……別に、お前が節操なしなのは今に始まったことじゃねぇしさ」

「……………」


そのフォローの仕方はどうなんだ、フォローになってないんじゃないのか、と思ったけれど、
俺がそんなことを言える立場ではないので黙っておく。


ブン太さんはちゃんとフォローしてるつもりみたいだし……。










「つ、つーかさ、……お前に落ち込まれて、そうやってグジグジといじけられたら、……その、なんつーか、……正直、“コレ”どうしたらいんだよ、」

「―――…!」


すっかり身を硬くしてしまっているソレを思って、ブン太さんはエプロンの裾を握りしめる。

羞恥にますます赤くなる顔をそのままさらけ出し、先と同じく此方を見つめていた。




有るのか無いのか、たまに分かんなくなる程度の理性を手放しながら、
俺の口元は段々と弧を描いていく。










「ほーんと、ブン太さんは昔から俺のこと煽るの上手いよね」

「……?、……別に煽ったワケじゃ…―――」

「言ったっしょ?“責任持つ”ってさ。その前にちゃんと謝りたかったんスよ、俺」


だから安心して、ブン太さんは俺に頂かれちゃってください。ね?

そう言葉を投げた瞬間、ブン太さんは一瞬だけ目を見開いたけれど。



―――次の瞬間には、恥ずかしさを押しやろうと投げやり気味に暴言を吐いたのだった。










「〜〜っ、……な、ならさっさとどーにかしろ。小さなことで落ち込むなんてらしくねぇんだよ。……馬鹿が」

「ん、……そうっスね」


実のところ、ブン太さん絡みの事で落ち込むのは“俺らしい”事柄ではある。

けどそんなことをブン太さんが知るわけもないので、ここは素直に頷いておくことにした。



それにこれ以上据え膳を我慢するなんて俺には到底無理だったしね。










「久々で溜まってるのもあるけど、ブン太さんが煽ったんだからその責任はちゃんととってもらうっスよ?」

「―――…ッ、……なんだよ、責任って……」


再びブン太さんの素肌へと手を滑らせつつ耳元で囁く。

煽っている、または誘っている感覚は無いらしいその人に苦笑を向けて、俺は下顎を掬い取ると啄むような軽いキスをした。

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