歌が止まって暫くしてから。
なかなかララからイノセンスを取り出さないアレンに代わって神田がそれを取り出した。

「俺は次の任務がある。これはお前たちが教団まで届けろ」

「……そう、わかったわ」

"任務"という言葉を耳にしてスピカが憂いた表情を見せる。
どうしたと声を掛けようとした時、顔を上げたスピカが先に言葉を発した。

「たまには電話してもいいかしら?」

「……何でだよ」

「何でって、理由がないとダメなの?」

「お前は用もないのに電話すんのか?」

「それじゃあ、心配だから。ユウはよく怪我をするでしょう?たまには連絡をとらないと私が心配。これで良い?」

「いつでも出れる訳じゃない」

「そうね……なら止めておくわ。だけどお願い、無理はしないで?」

残念そうに、それでもって不安そうに首を傾けながら駄目押ししてくるスピカにぐっと息が詰まる。
他の誰かがやればあざといと思うであろうこの行動もスピカがやるとすんなり受け入れてしまうのは何故だろうか。
軽く唇を噛みながら神田はスピカから視線を逸らした。

「…お節介だな」

「自分でもそう思うわ」

「……気が向いたら出てやる」

「ほ、本当に?」

まさか了承してくれるとは思わなかった。
そう思いながら元より大きな目をさらに大きくしてからいつもの朗らかな笑みを見せるスピカに小さく返事をする。

「もう行く」

「えぇ。気をつけて」

階段を下りていく神田が見えなくなってからスピカはアレンたちの方へと向かった。
アレンはどこからか持ってきたシャベルで穴を掘っている。きっと二人の墓を作っているのだろう。

「Requiem aeternam」

先の探索部隊に言ったのと同じ言葉をかけ、スピカも穴掘りを手伝うのだった。




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Requiem aeternamはラテン語。
「永遠の安息を」という意味です。






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