「お前…何しようとしてんだ」

「え?お蕎麦を……」

「食おうとしてんのか?フォークで?あ゙?」

「お、お箸使えないから……」

「……なら、」

箸の使い方を叩き込んでやる。
そう言ったユウの表情は鬼でした。

「だいたい蕎麦をフォークで食うなんて冒涜行為にも程があんだろ」

「ご、ごめんなさい」

「ごめんで済んだらエクソシストはいらねぇんだよ」

「(怖い…)」

普段よりも三割低い声には流石のスピカも縮こまってしまう。
かくして神田の箸実習が始まった。




「何でできねぇんだよ。挟むだけだろ」

「だって、滑るんだもの」

「滑るかよ」

「それはあなたが慣れてるからじゃない……」

「お前の根性がないからだ」

すでに完食した神田の隣で二本の細い棒と苦闘するスピカ。
本人たちこそただの箸の練習くらいに思っているが、残念ながら周りはそう思っていない。

「神田ェ…」

「何であんな仲良くしてんだ……」

「羨まs、あ!今デコピンしたぞ!?」

「何て事を…って、あーー!スピカちゃんの蕎麦を横から…!」

「何ですかぁ?バカップル気取りですかぁ!?」

食堂内がこれだけ騒がしいにも関わらず、スピカたちは気づかない。
その様子をジェリーは微笑ましく眺めていた。

「随分と仲良しじゃない。お似合いねー」

共にスラリと長身で、美人である二人は見栄えが良い。目の保養として見る者もいるが基本的には神田への嫉妬の眼差しが殆どだ。
人と関わりを持ちたがらない神田の珍しい光景に、目の保養派のジェリーはサングラスで隠れている目を細めてから厨房へ戻って行った。






デコピンのくだり

「…ごめんなさい、ご馳走様です……」

ビシッ(デコピン)

「っ!」

「蕎麦に罪はねぇ。よこせ」

「うぅ…どうぞ」


食べかけとか気にしない。






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