さてさて、何だか随分とすごいところに連れて来られちゃったよ。
セフィリアちゃん的には大歓迎なんだけど、ルークたちはそうでもないみたいだね。



「…第七音素の超振動はキムラスカ・ランバルディア王国王都方面から発生。マルクト帝国領土タタル渓谷付近にて収束しました。」



ジェイドとかいう軍人が何か話し始めたよ。
ていうか何でルークとティアは椅子に座ってて私は立たされてるの?ミュウですら座ってるのに!



「超振動の発生源があなた方なら、不正に国境を越えて侵入してきた事になりますね。」

「へっ、ねちねちイヤミな奴だな。」

「へへ〜、イヤミだって、大佐〜」

「傷つきましたねぇ……ま、それはさておき。ティアが神託の盾騎士団だと言うことは聞きました。ではルーク、あなたのフルネームは?」

「ルーク・フォン・ファブレ。お前らが誘拐に失敗したルーク様だよ。」

「キムラスカ王室と姻戚関係にある、あのファブレ公爵のご子息…という訳ですか。」


へぇ〜王室と姻戚関係なんだ。
こんな我が儘坊っちゃんが王族なんて大変だねぇ。


「何故マルクト帝国へ?それに誘拐などと…穏やかではありませんね。」

「誘拐の事はともかく、今回の件は私の第七音素とルークの第七音素が超振動を引き起こしただけです。ファブレ公爵家によるマルクトへの敵対行動ではありません。」

「大佐、ティアの言う通りでしょう。彼に敵意は感じません。」



神託の盾騎士団の導師、いわゆる最高指導者かな?のイオンがそう言った。
敵意はないかもしれないけどくそ生意気な態度である事は間違いないよねぇ。



「……まぁ、そのようですね。温室育ちのようですから、世界情勢には疎いようですし。」

「は、バカにしやがって。」



この温室育ちのバカ息子に対して大人げないイヤミな軍人かぁ。
これを引っ掻き回すのは面白いかも…



「落ち着いてください、二人とも。大佐、むしろここは協力をお願いするべきです。」

「そうですね。…我々はマルクト帝国皇帝ピオニー九世陛下の勅命によってキムラスカ王国へ向かっています。」

「まさか、宣戦布告…?」

「宣戦布告って……戦争が始まるのか!?」

「逆ですよぅ、ルーク様ぁ。戦争を止めるために私たちが動いているんです。」

「アニス、不用意に喋ってはいけませんね。」



むむむ、全然話しについていけない。
このはぶられ感、気に食わない〜!!



「これからあなた方を解放します。軍事機密に関わる場所以外は全て立ち入りを許可しましょう。」

「「!」」

「まず私たちを知って下さい。その上で信じられると思えたら力を貸して欲しいのです。…戦争を起こさせないために。」

「協力して欲しいなら詳しい話をしてくれれば良いだろ。」

「説明してなお、ご協力頂けない場合、あなた方を軟禁しなければなりません。それでも構いませんか?」

「な、…」

「詳しい話しはあなたの協力を取り付けてからになるでしょう。お願いしますね。」



あーもう、つまんない!
暇!暇!!暇!!!



「そんな不機嫌な顔をしなくても次はあなたにですよ。」

「遅いよ。」

「はいはい。それではあなたの名前は?」

「セフィリア・セレナード。下界旅行中の天使様だよ。」

「ああ、そうですか。それでは天使様?お家に届けてあげますから住所を教えて頂けますか?」

「何か馬鹿にした言い方〜…信じてないの?」

「おや、それはすみません。」

「ま、信じようが信じまいが別に良いけど。」



だって本当に何一つ嘘はついてないもん。
天使は正直だからね。



「はい、ではお家は?」

「天界。」

「…困りましたねぇ。」



なぁにが『困りましたねぇ』よ。そんな事思ってないくせに。
どうせ話しにならないとか、これだから子供はとか思ってるんでしょう?



「まぁ私の事はセフィリアって名前の天使と思ってればいいよ。別にあんたたちの邪魔するつもりも何もないし。心配なら監視をつけても構わないし?」

「…わかりました。信じましょう。しかしセフィリア、あなたには艦内を歩く事は認めれません。」

「えー!何で!?」

「ルークと違って利用価値がないから、とでも言っておきましょうか。」

「……」



このクソ眼鏡…利用価値がない?笑わせないでよ。
私が本気出したらそこのお坊ちゃまや導士なんかよりよっぽど役に立つっつーの。



「じゃあ良いよ。私はこの部屋にいるから。」

「物分かりが良くて助かります。それではルーク、あなたは決心がついたらそちらにいるマルコに言ってください。」

「はいはい、わかったよ。」

「それでは、失礼します。」



ジェイドが出て行ってすぐにルークとティアは立ち上がった。
逆にセフィリアは今までティアが座っていた場所に腰を下ろしぶすっと不貞腐れている。
アニスがルークたちに同行を願う声が聞こえたがもうそんな事はどうでもよかった。



「ねぇねぇマルコさん?暇な者通しお話でもしようよ。」

「いえ、私は仕事中ですので。」

「どうせルークたちはすぐに帰ってこないからさぁ。ね?」

「いや、ですから私は…「ね?」……」



有無を言わせない笑顔でマルコを話し相手にする事に成功した。


(さて、何の話から始めようか。)







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