紅葉がひらりと舞い踊る。
夕焼け時には象徴とも言える塔と夕日のコントラストが美しい街に来ています。

「今日はどんなお茶菓子ですか?」

「君はお茶菓子のためだけに来てるのかな?」

「そんな事ないですよ。マツバに会うのすごく楽しみにしてました!」

マツバ。そう、ジムリーダーのマツバ。
ただ今エンジュのマツバのお家に月一のお茶会のためにお邪魔してるのです。

「とか言いながらこないだのお茶会を不純な動機でドタキャンしたのは誰だい?」

「仕方ないじゃないですか!デンジさんが珍しく暇だから来いなんて言うから!!」

「ライラは彼の犬なんだね」

誰が犬です!まったくマツバは失礼極まりないですね。
あ、でもデンジさんの犬……悪くない響きです。

「ミナキといいライラといい何で僕の周りは変態ばかりなんだか……」

「愛を追い求めてるだけです」

「何ってるかワカラナイ」



□□□



「それでは、今日の本題です」

「どうぞ」

「デンジさんに私しか見えなくする呪いをかけてください」

「そこ自分で呪いって言っちゃうんだ?」

「うるさいですね!じゃあ魔法とでも言えば良いですか!?」

「(ホント見てて飽きないなぁ)」

ライラのシンオウ土産である森の羊羹を口にしながらマツバは思った。
彼女がジョウトを回っていた時にゲンガー使いである共通点のもと仲良くなった訳だが、出会った時からライラという人間は本当に面白かった。
また、自分の容姿にきゃあきゃあ騒ぎ立てる事もなく実に過ごしやすい存在でもある。

「残念だけど、呪いでも魔法でも、僕にそんな事をする力はないよ」

「なぁんだ、使えないですね」

「………でも人を不幸にする程度ならできるかもね。この先なにをやっても全て最悪な方向にしか進まないような。ねぇ?ライラ」

「ごめんなさい」

笑顔でそうゆう事言わないでください。
マツバは怒鳴り散らすんじゃない、静かに怒る怖いタイプなんですから!

「わかっててやるんだからライラもMだよね、ホント」

「Mじゃないです!痛いのも怖いのも嫌いですから!」

「でも相手がデンジ君なら?」

「嫌じゃないですね」

ライラが答えるとマツバはまるで菩薩のような柔らかで優しい笑顔を浮かべた。
本当に気持ち悪いな、何で友人なんだろう、デンジ君もこんなのに好かれてご愁傷様。そんな気持ちが溢れている。表情と心の中は反比例だ。

「よかったね。デンジ君にドメスティックバイオレンスの気がなくて」

「あったら好きになんてなりませんよ」

「まぁね、それにお兄さんも煩そうだし」

「ああ。マツバ、未だによく睨まれてますもんね」

「正直迷惑なんだよね。別に僕はライラなんかに興味ないし。なのに会う度に色々聞かれてさぁ」

「なんかにとは何ですか!イケメンだからって何を言っても許されると思わないでくださいよ!?」

「ごめんごめん」

「イケメンは否定しないんですか。」

「謙遜も過ぎれば傲慢だからね。……と、もうこんな時間だ。今日はシンオウに帰らないのかい?」

「はい。アカネちゃんの家に泊めてもらうんです」

「そっか」

じゃあもう少しは平気かな。そう言ったマツバに頷いてお茶を啜った。


(お茶友とのひと時)







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