どこにいるの、神様 真っ白だ。 どこもかしこも、ずっと恋焦がれていた光で満ち溢れている。 「…また、……」 死んでしまったのか。 魎は納得するような、それでいて不思議でならないという表情で己の手のひらを眺めた。 闇色でしかなかった世界が一転して、光しかない世界へと変わった。 そこには何も無い。 モノも無ければ音も無く、ただ自分ひとりが存在していた。 ここが天国だというのであれば、何という地獄だろう。 光のある世界に戻りたいと願っていたのは事実。 だが、眼前に広がる景色が欲しかったわけではない。 「……かみ、さま…」 どうか、どうか。 「神様……」 幸せでした。 心から笑えていなかったとしても、あの人が笑ってくれたから生きることが出来ました。 だって、そうじゃないとおかしいのだ。 闇の中で、闇を見つけることなんて出来ない。 自分の抱いていた闇が霞むほどの、巨大で艶やかな闇。 畏れるほど美しかった、光とは間逆の存在。 「っ鯉さん…!」 魎に手を差し伸べたのは、真っ黒な光。 だからこそ、救われた。 どんよりとしていた世界に、艶やかな、何色にも染められない光をくれた。 だからこそ、"魎"として生きることが出来た。 がくりと膝を落としたけれど、そこは床とも地面ともいえないふわりとした感触でしかない。 ここは何も無い。 欲しかったものは、こんな世界じゃない。 ただ、ただ会いたいのだ。 戻りたいのだ。 あの人のいる、世界へ。 [*前] | [次#] 【戻る】 |