さあ!お立会い!



拍手喝采が鳴り響く大通りで、締めと言わんばかりに青年が声を更に張り上げた。



東西東西!
どこへ行っても聞けない話!

憎き水神を倒した主は、英雄として伝えられた!
村では雨と主に感謝の嵐!
やれ飲めや歌えやの大騒ぎ!

命を留めた美少年は、この話を語り継ぐ!
魑魅魍魎を統べる主!
その地に伝わる悲しき風習を打ち破る!

義理に報いたこの男気!
いやぁ惚れるねぇお姉さん!

人情に厚いこの行動!
いやぁ泣かせるねぇお兄さん!


さてさてお立会い!
手前ここに取り出だしたるはその地に伝わる扇子の写し!
柚子の絵、柚子の句、どちらもそっくり精密緻密!
かの大妖怪ぬらりひょんが持つ物とおんなじだ!
儚く散った少年の想い、目にするだけで涙が出てくる!

男は度胸、女は愛嬌!
闇の主の妖怪任侠!
一本三十文と言う所、半額の十五文でさぁどうだ!?

さぁさぁどうだ!
土産にいかがかお姉さん!
きっと子供も侠気が身につく!
話の種にいかがかお兄さん!
きっと粋に決まるってもんよ!

手前の話に心揺れたら遠慮は無用だ皆の衆!
さぁ買ってきな!
やれ買ってきな!!



あっという間に銭を差し出した観衆が芸人を揉みくちゃにした。
買わないまでも、口上代として心ばかりを投げ入れる者達もいた。

風呂敷一杯の扇子が無くなり、ぼさぼさの頭を撫で付けながら青年は無邪気に笑う。


「今日の売り上げも好調だな、明日はどこへ行こうか…」


銭を数えながら考えを巡らせる。
ぬらりくらりと生きながら、青年は日本全国で扇子を売り捌いていた。



さぁお立会い!
嘘か実かそれは話が終わってからだ!
自分の心に聞けばわかるさ!

さぁお立会いお立会い!


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