ここから本番 人の群れの真ん中で、自前の椅子に腰掛けた芸人は扇子で膝頭を2度叩いた。 悲しき運命の美少年は微笑んだまま湖へ。 その翌日から雨はざぁざぁ土砂降りだ。 嘆く領主に集うは大喜びの村人達。 短い人生で少年は何を感じて、何を思ったか、ええ？ お兄さんよ、わかるかい？ 偶然は必然、出会うべくして出会った2人は運命に阻まれ思いも通じずこの世とあの世で想い合う。 織姫と彦星どころじゃない。 まるでイザナギとイザナミだ。 かの大妖怪も百鬼を持たぬ頃はある。 若き主にも敵わぬ宿敵、それが恋敵たぁ泣かせるねぇ！ さぁさぁお立会い！ 終わったかと思ったかい！？ ところがどっこいそうはさせねぇ！ この物語にゃ続きがあんのさ！ さぁさぁ皆さん聞いておくれ！ 先に申した遊侠伝！ こっから本当の物語！ 力を付けた大妖怪！ 何をするか、どうするか！ 勿論そいつは決まってる！ 出入りなんてするわけねぇ！ 先に申した義理人情！ やるのは勿論一騎打ち！ さぁさぁ聞いておくれ、最後まで！ 闇の総大将ぬらりひょん！ 水神相手に大立ち回りだ！ 切ない顔をして聞いていた観衆がワッと声を上げた。 ここは江戸っ子の集う場所。 血の気の多い者達が急かす様に芸人の続きに耳を傾けた。 [＊前] | [次＃] 【戻る】 |