嘘か実か、最後まで聞いて心に聞いて さあ、お立会い! お急ぎでない方は聞いておくれ! かの大妖怪、ぬらりひょん! ぬらりくらりと家屋に入れば家財を全て持ってっちまう! 姑息な妖怪と思いきやそうではない! 真の姿は義理と人情! 情け深い懐の深さと圧倒的な強さを持つ魑魅魍魎の主なのさ! 手前の話はそのぬらりひょんが魑魅魍魎の主となる前の、とある村に伝わる昔話! ちょいと其処のお姉さん! 子供の寝物語にいかがかな? ちょいと其処のお兄さん! 酒の肴にいかがかな? さあさあ!お立会い!お立会い! 大通りで青年が大手を振って声を張り上げると、何だ何だと物好きたちが好機の視線を投げかける。 面白ければ三文やろう! ならば俺は四文だ! 期待を膨らまし、若い芸人へ圧力をかけると青年は受けて立つと言うように快活に笑う。 さてお立会い! 手前が耳にしたこの物語! 時は定かでは御座いませぬが、昔々のそのまた昔。 今よりずっと貧しい時世に、若き闇の主が現れた! 場所は定かでは御座いませぬが、とある山奥とある村。 日照りの続いた哀れな村に、若き闇の主が現れた! さぁさぁ皆さん! かの大妖怪ぬらりひょんが魑魅魍魎の主となる前の義理と人情溢れる遊侠伝! 急ぎでなければ聞いておくれ! 青年は懐から扇子を取り出し、開始の合図だと言う様にパンと広げた。 広げた扇子には上品な柚子の絵が描かれていた。 [*前] | [次#] 【戻る】 |