散歩は決まった時間にしてあげましょう 「犬神君が俺を凄まじい眼力で見てくる。どういうこと?」 「犬神は魎のことが好きなんだよ」 「マジで?ラブ?ライク?」 「ラブだと思うよ」 「うぉぉおおおい!ちょっと待て!!!」 午後の授業からずっと背中に感じていた殺意しか感じられない視線に堪えられず、放課後にやって来た玉章に助けを求めた。 思わぬ事実。 ヨソウガイです。 「犬神、俺まだあんまりそういうの興味ないからまずは友達からでいい?」 「良かったね、まだ望みはあるじゃないか」 「玉章!勝手に俺の気持ちを嘘で固めて…つーかなんで俺振られてんだよ!意味わかんねぇ!」 どちらかといえば女の子と付き合ってみたかったけど、これはこれで面白いかもしれない。 喚き過ぎて少し涙目になっている犬神は、確かに犬のようだ。 見えない耳が垂れている気がした。 これはこれで、愛でることができるかもしれない。 「お…おまえ、本当に何なんだよ!人間の癖にマジでムカつく!」 「………お手」 「…………いでででででっ!!!」 「…学習しない犬だなぁ。玉章、しつけ間違ってない?」 「それはすまないね、魎。だけどもうどうしようもないんだ」 「そっか」 飼い主がネグレクト。 可哀想な犬神。 今度から甘やかしてやろうかな。 「そんな目で俺を見るな!!」 「犬神、鼻水出てる」 「それじゃあ魎、犬神のこと頼むね。しつけし直しても構わないよ」 「うん、わかった。玉章忙しいもんな。というわけで犬神、今日から俺も世話してやっからな」 「え、玉章!?」 「キューピッドになってあげた僕に感謝しなよ犬神。じゃあね」 爽やかに踵を返した玉章は、背中を向けたまま手を振っていた。 何アレ格好良い。 さすが帝王。 「それじゃあ一緒に帰ろうか。えーと…リードつけるべき?」 「ぶっ殺すぞ!」 反抗的な犬だ。 まぁ、馬鹿な子ほど可愛いというものだろう。 [*前] | [次#] 【戻る】 |