「ううむ、どうしたもんかの…」
「よう大将、頭を抱えてどうしたんじゃ?」
「狒々か…まぁこれを見ろ」


今日の夕方には総会があり、狒々も久しぶりに屋敷にやって来た。
庭から居間でぶつぶつ何かを言いながら悩むぬらりひょんに声をかけると、ずいと何枚もの書類の塔を目の前に差し出される。


「ほほう、リョウの見合い写真か」
「もうアイツも16歳…人間としても妖怪としても結婚できる年じゃからな」 
「しかし皆必死じゃな、ほれ、コイツなんぞ7枚も写真が載っとる」


屈強な身体を自慢するようにいくつも角度を変えた写真が貼り付けられた紙を狒々は呆れた面持ちで見つめた。


「まだまだ嫁にはやりたくないのう…」
「キャハハハ!じじ馬鹿じゃな!」
「本人の気持ちも考えねばならぬしな…」
「そりゃあそうだ。リョウなら見合いなんぞせんでも引く手数多だろうて」


現代を生きる若者として人間と同じように学校に通っていることで、人間の男からも溺愛されるリョウは本家妖怪たちから尊敬の念を抱かれている。
学業に勤しみ、幾人も舎弟を抱える姿は奴良家第一子として申し分ない、と。


「もうちっと待ってもらうとしよう」
「それが良いだろうよ」
「おい狒々。そう良いながら猩影の写真を置いていくな」
「どうかなさいましたか?」
「何事ですかな?」
「牛鬼、お前も後継者達の写真を置くな。烏天狗も同じじゃ」


次々と現れてはアルバムを重ねていく幹部にぬらりひょんは更に頭を抱えた。


我が孫ながら、末恐ろしいわい…。

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