え、豆?

んなの年の数だけ食って、あとは小分けにして酒の肴で色んな奴に配ったよ。

それでも余っちゃったからどうしようかなぁって思って、とりあえず総会でやって来た牛頭丸目掛けてぶつけた。
牛鬼は本当に角生えそうだったから怖くて止めたけどね。

捩眼山の方角にばら撒いてたら総大将がすっげぇ怒るからムカついて総大将にもぶつけた。
そしたら懐に一発くらって、いやぁマジで肋骨イかれるかと思ったよー。

んで部屋に帰ったら、あるわあるわ。
4分の1程度には減ってたけどね。
もうね、恐怖。
寝ると豆が襲って来るんだよ。
俺、豆に土下座したの初めてだよ。
ごめんなさい。追いかけないでください。つってさ?
処分しなきゃだけど、捨てると更に悪夢見そうだしなぁ。


首無に「お前昔義賊だったんだろ?だったら食いもんに困ってる奴にコレあげてこい」って言ったら「同情するなら金を出せ」って言われた。

超ムカついたから頭奪って紀乃ちゃんのおっぱい目掛けてぶん投げたよ。
華麗に避けた紀乃ちゃん、格好良かったなぁ。
床にめりこんだ首無の頭が可笑しくって、散々笑った後豆で埋めた。
どう?有効活用してるだろ?


そんで納豆小僧をひっつかまえて「納豆にかもせ!」って言ったら、半分は納豆になった。
最近の朝メシで納豆が続いてるだろ?
それ、俺のおかげなんだよ。
感謝しろよな。
そのおかげでしばらく納豆小僧見てないけどね。
過労だってさ、あははははははは!!
超うける!!


「…それで?まだ余ってんだろ?」

「うん、だから埋めた」

「庭に?」

「庭に」


余ってたって言っても、あとは少しだったから。
俺の年の数ぐらい?
それだけの豆を庭に埋めた。

"俺菜園"と札を立てて、土を柔らかくして、埋めた。


「最近、やけに庭の手入れをしていると思ったらそういうことだったんですね…」

「まさか義叔父貴にそんな趣味があったとはな…」

「バーロー。まだまだガキな鯉ちゃんと乙女ちゃんにはわかんねぇだろうなぁ。中々楽しいぞ?土いじり」

「完全に老後の趣味だけどな」

「…俺と一緒に豆の成長を見守るとかそういう優しさは?」

「よっし、山吹。そろそろ逢瀬にでも行くかい?」

「あ、はい!」


今日は歌舞伎でも見に行くか、と言いながら手を繋いで屋敷から2人は出て行った。
何それ、俺も見たい。


「えええええ!俺も行く!」

「土いじってろ」

「えええええ…」


つれない拒絶に肩が落ちる。
いいよ、豆可愛がるから。

こいつらの成長を見守って、昔の鯉ちゃんでも思い出すからいいよ。

さぁて今日も水やりしましょうねー。







鼻歌交じりに庭先で水を撒いている魎を、ぬらりひょんは複雑な顔で眺めていた。



「大きくなぁれ」



まるで子供に向ける目だな、あれは…。


だから早く結婚しろと、日に日に隠居生活を身に浸透させている魎を不憫に思った。

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