イルミ連載(娼婦タカラバコ | ナノ

 救いになれば

眠っている中でも触れられていることがわかる
まるで大切なものを扱うように優しく、暖かい
目を開けたいのに開けることができなくて
結局は夢の中に戻されてしまう

やっと目を開くことができたのは
どれくらい経ってからなのか
モヤがかかっていた頭が
全てなくなりクリアになった気がした

「イル、ミ」

何故だか分からないけど
そばに居るという確信があった
すぐ隣で声がする

「ミーヤ、やっと起きた。」

「うん。どれくらい寝てたの?
1週間くらい…?」

大きな手が頭を撫でてた
寝ていた時と同じ感覚
やはりあれはイルミだったのだ

イルミの髪が出会った頃よりも長くなっていた
綺麗な黒い髪

「ううん。1年くらいじゃない?」

「え?!?!!」

雷に打たれたような衝撃が襲う

「う、そ。
私、なんで?」

「怪我が思ったよりもひどかったみたい。
煙も吸ってたしね。
でも安心して。ゾルディック家で治療して完治してる。
あとはミーヤが起きるのを待ってた。」

起き上がろうとすると
イルミが支えてくれた

腕には点滴の管が刺さっていた
少し身体が動かしにくいが
それ以外は1年に寝ていたというわりに
肌も爪も十分に綺麗だ

「ミーヤの美容のケアはもちろん最上級のもので
行っていたから安心して。
寝てたからってミーヤの美しさは衰えないよ。」

イルミの変わってるところは相変わらずだ

イルミに連れられて窓の外を見てみる
窓からは空と霧がかかった森が見える

「ここはゾルディック家。
俺の家だよ。」

「え?あの?暗殺一家の?!」

都市伝説のような話の男が目の前に
そして自分がいる場所がその家で
目が覚めてから何度も驚かされている

「うん。」

「お店…お店はどうなったの?!」

「はい、これ。」

そう言って手渡された写真には
目を背けたくなるモノが映し出されている

焼け焦げたビル、そして人
焼け残っているものをみると
オーナーや女の子たちのものだった

「なんで、ひどい…。
みんな頑張って生きていたのに。」

「ミーヤがいたとこはそういう世界。
いらないものは消す。
それが当たり前。」

イルミは私から写真をとりあげると
火をつけて灰皿においた
燃えていく写真を見て唇を強くかんでいた

摂取するだけして
用済みとなれば迷わず捨てる

人を人とも思わないライト=ノストラード

「ミーヤ、落ち着いて。
オレがミーヤの代わりに
ミーヤのしたいことをしてあげる。
何も心配しないで大丈夫。」

その言葉で我に返り小さく息を吐いた

「イルミ、私は自分の非力さが辛いだけ。
良くしてくれたオーナーを守ることも
これからなにかすることも出来ない。
ただこちっぽけな人間だもの。」

「何言ってるの?
ミーヤは非力なんかじゃないでしょ。
オレにこんなに衝撃を与えられるのは
ミーヤくらいだよ。」

このとんちんかんな答えが今は救いになる

「イルミ、ありがとう。」

「どういたしまして。
ほら、目が覚めたんだしお風呂に行こう。
ミーヤはまだ洗えないから
オレが洗ってあげるよ。」

絶対に洗うだけでは済まない

「前言撤回!!!!!!
自分で出来る!!!」




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