04弱いもの [ 5/43 ]

重い足取りで教室の扉を開けると
今までざわめいていた教室が
シン・・・と静まり返る

そしてクスクスと笑う声が聞こえてきた
机には孤児と落書きがある
それを消す気もない

素性を隠して入学したはずなのに
いつの間にかバレていた
ここはお金持ちが通うような学校で
誰かがいたずら半分に調べたのかもしれない
高校までエスカレーター式の学校で
ずっとこのまま嫌がらせされていくのかと思うと
胸が苦しい
教師達も見て見ぬ振りだ
頼れるものなどここにいない

イルミ様の家業の事は知っているし
ゾルディック家が暗殺一家として
恐れられていることも知っている
自分がゾルディック家から来ていることは
知られていないらしい
知られていたら誰も関わってこないはずだ

こんなことをされても
社会勉強にと、入学させてもらえたのだから
イルミ様にいうことも出来ない

(家庭教師だけでもよかったのに・・・)

小さくため息をついた
家庭教師が教えてくれていたことは
上の年齢の勉強だったらしく
正直、勉強しに学校に来ることもないのだ

イルミ様の好意を無駄にしてはいけないと
休みの日以外は休まずに登校している

グイッと身体が後に引っ張られ
あとから頭に痛みが走る
同じクラスの男が髪の毛を引っ張っていた

「おい、ニノ。
上級生が呼んでるぞ。」

「いたいっ、行くから引っ張らないでっ」

遠慮もなくグイグイと引っ張られては
ついて行くしかない

廊下まで連れていかれると
いつも虐めてくる上級生の男達が
5人ほどいた
いくつかは知らないが
2つくらいは上のはずだ

下の学年の自分を呼び出しては
殴ったり、そのまま連れ回したりするのだ
そして気まぐれに何かを買い与えられる
「お前孤児で貧乏だろ」と言われるが
確かに自分にお金はないが
ここにいるのだからどこからか
お金が出ているとは思わないのかと思う

お金さえ払っていれば基本的には
授業に出なくても何も言われない
教師達もお金がある家の生徒には
何も言えないのだ

「ニノ。
オレたちに遊んでもらえて
嬉しいだろ?」

殴られたりするのは
何故かあまり痛くない
この教室にいるよりはマシだった

コクリと小さく頷けば
少年たちは満足そうにしている

そして今日も教師がこない教室で
時間を潰すのだ

(外の世界は弱い者には容赦がない)

というのが日々思うことだ

少年たちは漫画を読んだりゲームをしたり
喋ったりと好きに過ごしている
自分は部屋の隅で蹲っているのが常だった

(イルミ様何してるのかな・・・)

そんなことを考えていると
衝撃で身体が横にふきとんだ

「おい、聞いてんのか?」

「ごめんなさい・・・、」

少年たちの目が全てこちらに向いていて
ニヤニヤとしていた

「お前、ぼーっとしてんなよ。
オレたち呼ばれたらすぐに反応しろ!」

2つしか違わないとはいえ
体格の差は大きい
10歳でまだ体重も軽くて
殴られればすぐに倒れてしまう

「はい・・・」

「顔は殴んなよー」

「そいつ、顔だけはいいからな。」

「わかってるよ。」

ゲラゲラと笑う少年たちには嫌悪しかなかった

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