40愛しの貴方 [ 41/43 ]

大きなショッピングモールに行きたいと
お願いしてみるとすぐに向かってくれた
できるだけ大きくて人が多い場所

計画を悟られないように
無邪気に楽しむ少女を演じる

老人が私に着て欲しいであろう
服を選び試着すると喜ぶ

「やはり、好みは一緒じゃな。」

誰と?とは聞かない
きっと私の母親だ

何件かブティックを巡り
付いてきている護衛達の
腕には沢山の紙袋

その様子を横目で確認して
老人の袖を小さく引っ張る

「おじい様、私·····。」


「どうした?」

顔を赤らめ耳打ちする

「おトイレに行きたいの」

「おお!気が付かないですまなかった!
今日連れてきている護衛達はみんな男だから
中には入れないが大丈夫かい?」

「もう!私を5歳の女の子とでも思っているの?
ちゃんとできるわ!」

わざと頬を膨らませめ怒れば
老人は大笑いした

「そうだな!
ニノいっておいで。」

笑顔で手を振り
トイレに入ると表情が消える

これからどう逃げようかと
色々なパターンを頭の中で想像する

ふと、鏡の前で紅を直す女性が目に入った
金髪のその女性は鏡に向かい紅を直している

それだけなのに体に電流が走ったかように
ビリビリと痺れた

「·····イルミ様」

女性は口紅を床へと落とす
コツン、と落ちる音がトイレに響いた

「よく、気がついたね。」

姿が違ってもわかる

「イルミ様、会いたかった·····!」

抱きつくと優しく手で髪を撫でてくれる

「ニノが気づいてくれてなかったら
どうしようかと思ったよ。」

「逃げ出す為に数週間頑張ったの。」

「すぐにでもニノを迎えに行くことはできたけど
血が繋がっている人といる方が幸せじゃないのかと
思って行動できなかった。」

イルミ様に抱きつく力が自然と強くなる

「そんなわけない!
私の幸せはイルミ様といること。
イルミ様がいないなら私は死んでしまいたい!」

「ニノの気持ちはわかった。
さっ、あとは任せてニノは少し休みなよ。
あいつのとこは気を張って疲れただろう?」

優しく顎を掬われて
唇が重なる
何かが口の中に入ってものを
躊躇することなく飲み込んだ

段々と視界が狭くなり意識が落ちていった


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