38離れしった光で [ 39/43 ]
驚いたように目を見開く
「何を言っているんだ。
やっと見つけた孫娘をかえしてもらったのは
こちらの方だ。
帰りたい、なんて言うんじゃない。」
「私の家はここではありません。
血が繋がっていたとしても
私はイルミ様の元に帰ります。」
老人から小さくため息が漏れた
「君は長く囚われすぎた。
今日はもう寝なさい。」
そう言って悲しそうに
老人は出て行ってしまった
カチャリと鍵が閉まる音が
静かな部屋に響いた
「イルミ様.......」
いない人の名前を呟く
もう帰れないのだろうか
心臓がぎゅっと痛くなった
心の中にあるのは
写真の中で微笑む両親ではない
ずっと育ててくれていたイルミ様だ
血の繋がりよりも私はイルミ様を選ぶ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「おじい様、おはようございます。」
食事をする部屋にはもう既に
コーヒーを飲みながら新聞を読む老人がいた
「おお、ニノおはよう。」
ニコリと微笑めば老人も頬を弛めた
次の日から私は抵抗をやめた
イルミ様の名前も出さない
この老人を祖父だと慕う
早くこの屋敷から出してもらえるように
こうして2週間ほど経った時に
チャンスは訪れた
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