35道化のように [ 36/43 ]

スーツを着た男は高そうなスーツを着て
歳をとっている老人だった

私の前に来ると膝をついき
シワシワの手で私の手をにぎった

呆気にとられて手を引くこのを忘れ
この老人は誰だろうかと考えるが
知り合いがいるわけもなく
考えるだけ無駄だった

「ニノちゃんだね?」

小さく頷くと
老人の目には涙が溜まる

「会いたかった・・・!
本当に生きているとは・・・!」

「誰かと勘違いしてませんか?」

なんとなくこわい、と感じ
急いで手を振り払い立ち上がる

「いや、しっかりと調べ。
やっと会うことができた。
私の娘の忘れ形見だ。」

「ち、違います!
さよなら・・・!」

その場から立ち去ることしか考えていなかった
手を触れられても気持ち悪いとは感じなかった
本当に肉親なのだろうか

走った先にイルミ様を見つけ
ほっと息をつくことが出来た
私を見てイルミ様が首を傾げる

「ニノ、どうしたの?」

「なんでもない。
1人で怖くなっただけ。」

「・・・そ、
ニノは甘えん坊だね。」

持っていた飲み物を手渡され
それに口をつける
乾いていた口の中が潤っていく

「ニノ、何か欲しいものある?
最近何も買ってないしね。」

「ないよ!
こうやって一緒におでかけできるだけで
とーっても楽しいの!」

買ってないとはいっても
毎月新しい服、靴など贈られていて
何かがほしい、ということはなかった

本当こうやって並んで
外に出ていけることが幸せだった

「なら、手つないで。」

「いいよ。」

大きな手が私の手と重なる
イルミ様の手は冷たい
けど気持ちはポカポカとする

さっきの老人は気になったが
どうでもよくなった


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