31来客 [ 32/43 ]

「おはよう。
ここにイルミはいるかな?」

朝起きたらリビングに
知らない男の人がソファに座っていた

黒髪の男は額に包帯を巻いている
若そうだが一般の人ではないことがわかる

この家に入ってくるのも容易い事では無いはずだ

驚いて止まっていると
男が立ち上がりゆっくりと近づいてきた

「来ないで!」

男は機嫌を悪くした風でもなく足を止める
本能でそう叫んでいた
ハッとして口を手で押さえる

「警戒しなくても君に危害は加えない。
イルミがなかなか捕まらなくてさ。」

「ここにはいません。
いつも、いるわけじゃないの。」

「へぇ・・・
君はイルミのナニ?
こんな所に閉じ込められて
随分と大切にされてるんだね。」

優しい口調だがどこか威圧感がある
これが本性ってわけではないのだろう
探るような目も怖い

「育てもらってるだけです。
イルミ様は恩人です。」

「恩人、か。
首に痕をつけられて、
ただ育てられてるってわけでもなさそうだけど。」

「これはイルミ様がつけてくれた、
イルミ様からの印です。」

イルミ様は私を抱く度に
体に赤い印を残していく
首だけじゃなくいろいろな部分にもある

「君は随分とイルミを信用してるんだね。」

「私が信じるのはイルミ様だけです。」

「目を覚ましてあげようか?」

「・・・え?」

目を覚ます?言葉の意味が理解できない

ゆっくり止めていた足を動かし
男は目の前に立つ

「君を虐めてたらイルミは
助けにきてくれるのかな?」

男から目を離せない
ゆっくりと手が近づいきた
瞬間なにかが目の前をすり抜けた

「離れて。」

イルミ様が立っていた
一瞬でイルミ様の腕の中に
抱えあげられた

「遅いぞ。」

「待ち合わせ場所はここじゃない。」

「お前が大切しているモノを見に来ただけだ。
予想以上に良いものだな。」

「あげないよ。
仕事なら終わらしたから
さっさっと口座に入金よろしく。
帰れば?」

「まあ、ゆっくりさせてくれ。」

さっきまでの優しい口調から
少し砕けた口調に変わる
イルミ様と親しいのかもしれない

「イルミ様、お茶をお出しする?」

「いらない。
オレから離れないで。」

そのままソファに座り
男は自らお茶をいれた

初めてのはずなのに戸惑うこともなく
用意をする男を不思議な気持ちで見つめた

[*prev] [next#]
top
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -