21次男と少女 [ 22/43 ]
「お前なんなんだ?!」
本を読んでいると突然現れた
ふっくらした少年が怒っていた
「・・・あなたは誰?」
「オレはこの家の次男!
ミルキだ!」
わたしより少し年上だろうか
ふっくらしているので貫禄がある
「わたしはニノ。
イルミ様にお世話になってます。」
この家の次男ということは
イルミ様の弟だろう
黒髪は同じだがあまり似ている気がしない
「ニノ聞いてるんじゃない!
お前なんなの?この前部屋覗いたこと
イル兄にバレて怒られたし。」
それは自業自得だろうと思ったが
あまりに憤慨しているので口には出さないでおいた
とりあえず机の上にあったお菓子を勧めると
怒りながらも次々に口の中にいれていく
「オレは機械とかつくってるわけ。
オレは頭脳があるけど、お前はなんかあんの?」
「・・・さぁ?」
「はぁ?!なんでこの家にれるわけ?!」
不思議な力のことはミルキくんには
言わない方が良さそうだと思い
ニコニコと微笑むだけにした
「その様子だと訓練とかもないんだろ?」
「訓練?」
「拷問のだよ!」
「ないです。」
はぁーと大きなため息をついて
じろりと睨まれる
「オレ達と飯も食わないってことは
イル兄が別に作らせてんだろ。
母さんはうるさいだろうけど
親父は黙認してるのが不思議だ。」
「これも食べる?」
「食ってやるよ!」
机にあったぶんのお菓子は
全て食べてしまったので
新しいものを出してくると
だんだんと機嫌がよくなってきた
「うめぇ!なんだこれ!」
「それはイルミ様が取り寄せてくれた
ジャポンのお菓子です。
いっぱいあるから食べてね。」
お菓子に気を良くしたミルキくんは
好きなゲームの話やキャラクターの話を
饒舌に喋っていた
「今度、オレの部屋に来いよ!
面白いゲームがあるんだぜ!」
「それは無理だね。」
突如聞こえてきた声に
ミルキくんの顔は固まる
「なんでここにいるの?ミルキ。」
「いや、これは・・・。
今日は遅いんじゃなかったのかよ。」
「仕事なんかすぐ終わるよ。
ほら、お菓子も食べただろ。
出ていきなよ。」
首根っこを掴みまるで
重みなどないように
扉へと強制的に連れて行ってしまった
「またね、って言えなかったな・・・。
また来てくれるのかな?」
しばらくするとイルミ様が戻ってきた
「イルミ様おかえりなさい。」
「うん、ただいま。
ミルキと何話してたの?」
「ゲームと好きなキャラクターの話を
してるのを聞いただけ。
最初怒ってたけどだんだんと
機嫌がよくなってきて・・・」
「そう。」
話を遮るように唇が触れる
「この部屋のセキュリティ、もっと
厳重にしなきゃだめだね。」
「セキュリティ?」
「ニノは気にしなくていいことだよ。
ほら、キスに集中して。」
「ん、はい。」
この優しくて甘い時間が好きだ
◇◇◇◇◇
『ニノのこと好きになったら
許さないからね?』
部屋を放り出される時に
放たれた言葉は冗談には聞こえなかった
ブルっと悪寒が走る
部屋も簡単に入れないように
鍵が付けられていたが
ハッキングしてなんとか入れた
なかなかハッキングするのが
難しかったから苛ついてしまったが
ニノは不思議そうな顔はしていたものの
特に不快そうではなかった
イル兄と一緒にいるはずなのに
暗い影はなく、とても穏やかな
普通の少女だった
「イル兄とキスしてる時点で
普通じゃねーか・・・」
少女の正体を結局知ることが出来ないまま
部屋を追い出されてしまった
「まぁ、また行けばいっか。」
ハッキングなんて簡単にできるから
まあまたすぐに会えるだろう
ニノは少し好きなキャラに似てた
コスプレでもさせてみるかな・・・って
考えているとヒュンっと
顔の横を何かが掠めていき
頬から血が垂れた
うるさい心臓を押さえ後ろを振り返ると
イル兄さんがこちらをまだ見ていた
しばらく無言で見つめあった後
部屋の中へと引っ込んでいったのを見計らい
自室へと走る
「こっえぇー!!!」
投げられたのはイル兄の針だ
これは警告だろうし
明日の訓練のメニューはキツそうだ・・・と
深い溜息が口から漏れた
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