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その酒場は今日は貸切らしく
自己紹介の時にみた顔ぶれしかいなかった

椅子が全てソファーで酒場というよりは
ちょっとお洒落なお店みたいだ

船員達の横には綺麗な女の人達が
一緒に飲んでいるという感じだ

「キッド」

こっちだというように
キラーがキッドを呼び
キッドも無言でキラーの近くに
あたしを膝の上に座らせたまま
ソファーへと腰掛けた
それと同時に女の人が隣に座る

「お酒どうぞ」

「あぁ」

「お頭さんは何か食べる」

ローブからちらりと盗み見れば
この店で一番綺麗な人なんだろう
自信に満ち溢れとても堂々としている
それに比べあたしは
ほぼ口しか見えないローブを着せられ
男か女かさえも
わからないだろう。


お肉が刺さったフォークを
目の前に突き出される

「食え」

そのままお肉を口にする
咀嚼するとお肉の甘みが
口の中に広がる

美味しい

船の中で食べる物は
魚が多かったりするのだが
今までたいした食事を与えられていなかった分
全てが初めてで美味しいのだ。


「くく、うめェかのか?」

コクコクと頷けばキッドは
またお肉をくれる

「お頭さん、その子何?」

自分に構ってくれないキッドに
痺れを切らした女が問う

何か言った方がいいのかと思い
声を出そうとした瞬間
大きな手が口を塞ぎ
「喋るな」と低い声が耳元で聞こえた

「別になんでもねェ。
気にすんじゃねェよ」

あたしを膝の上に乗せたまま
ご飯を与えてくれる

美味しいご飯に夢中で
特に周りを気にしていなかったが
お腹が満腹になりやっとチラリと周りを見る

「お頭さん今夜どう?」

この言葉が耳に入ってきた
豊満な胸をキッドに押し付けているということは
いつもあたしにするようなことをしようと
誘っているという事だろう

他のテーブルにいた人たちも
少なくなっている
きっと相手を見つけて
出ていったのかもしれない

「気分じゃねェ」

「その子なら放っておいても大丈夫でしょう?
ご飯もたべれるみたいだし
お頭さんが食べさせているとはいえ
そんなに子どもでもないでしょう」

少し馬鹿にした物言いに
腹が立たないかと言われればそうではないが
商品として育てられ
結局はキッドに買われているあたしが
怒るのは違う気がするのだ

「うるせェ。
キラー先に戻る」

「あぁ。俺も支払いをすませたら
すぐに戻る」

あたしを抱きかかえ
立ち上がった瞬間
ローブがピンっと引っ張られ
フードがとれた。

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