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「食い終わったろ。次行くぞ」

「まだ買い物するの?」

伸ばされた腕に抱えあげられる

「テメェが本屋行きてェつったんだろーが」

「う、うん!!!行きたい!」

見つけた本屋に入ると
紙の匂いが鼻をかすめた

右を見ても左を見ても
本がズラリと並び
思わず身を乗り出してしまう

「落ちるぞ」

「あ、ごめんなさい」

あたしをそっと床におろす

「好きに見ろ
人もいねェから
フードも外していいぞ」

「ありがとう!」

嬉しさに動かされて反射的に微笑む

キッドの顔がまた固まる
笑顔はダメなのかもしれない
喜びを顔に出さないようにと
表情を戻す。

キッドはドアの近くにあった椅子に
足組をしながら座った

いろいろな本がある中で
迷わず童話のコーナーに向かう

本当は勉強のために
もっと難しい本を
読んだ方がいいのかもしれないが
そんな本を読む気にはなれない。
自分が体験できないような話がいい。
王子様が出てくる物語
なんかもいいかもしれない

今後の参考にとパラパラと読んでは棚に戻す

「おい」

どれくらいの時間そうしていたのかわからない
キッドがめんどくさそうに立っていた

「・・・ごめんなさい」

「テメェが読んでたヤツは
読み終わったのか?」

「うん。3回は読んだ」

「3冊」

「え?」
よくわからず首を傾げる

「3冊なら買ってやる」

「すぐ選ぶ!」

意味を理解して
すぐさま選ぶために本棚に戻る

王子様が出てくるものを2冊と
冒険ものを1冊

手渡すと会計を済ませた
キッドが戻ってきた

「本は?」

「これから連中と
店で飯だ
船に届けさせる」

連中と言うのは
船の仲間の事だろう

「あたしは船に帰ったらいいの?」

「テメェも来るに決まってんだろ」

差し出される腕に自ら体を預ける
何故だか今日のキッドは怖くない

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