蘇る記憶
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マルコに拾われたあたしは
白ひげ海賊団の船に乗り
マルコにつきっきりで世話をしてもらっていた

「マルコ隊長、私がお世話しましょうか?」

子どもの世話などしたことがない
マルコを心配してナース達が声をかけていたが
頑なに譲らずずっと側にいてくれた

どうしても偵察などで
離れていなければ行けない時は
マルコが信用しているナースに預けられていた

「マルコ、だいすき!」

「おれもだ。
アリアがいれば何にもいらねェよい。」

ぎゅっと抱きしめてくれる
優しい温もりが大好きだった

両親を失ったことも
徐々に受け入れられていた

◇◇◇

船に乗り10年が過ぎた
14にもなるとマルコの立場がわかる
幼い時のまま無邪気にそばにいて欲しいと
言えないこともわかっていた

一部のナース達に嫌がらせもされていた
それをマルコに知られたくなくて
買ってもらった裂かれた服を海へと投げ捨てる

「あの子がいるせいで
マルコ隊長、私達にかまってくれなくないわ。
つまらない。」

「本当に。
何の役にも立たないじゃない。
お荷物よね。」

蔑むナース達の声が聞こえ体が固まった
その日からできるだけ役に立とうと
洗濯や厨房の手伝いを率先してやった

「アリア、無理するなよい。」

過保護のマルコに
毎日抱きしめられて眠りにつく
それだけが幸せだった

ずっとこのままがいいと
心の中で思っていた


◇◇◇

「アリア、親父と何人かの隊長で
ナワバリに行かなきゃならない。
戦いになるだろうからお前を
連れていけないよい。
留守番できるか?」

「大丈夫。
マルコ、気をつけてね。」

「おれはお前が大切だ。
できるだけ早く戻ってくるよい。」

いつものようにぎゅっと抱きしめられ
頬にキスをされる
しばらく離れる時にしてくれることだ

この日はいつもお世話をしてくれている
ナースもでかけてしまっていた

心細くはあったがもう14だ
ほとんどのことは1人でできる

いつもの通り洗濯をしていると
目の前が暗くなり何も見えなくなった

「いやっ、んんっ!!」

口にも何かを突っ込まれ
声を出すことも叶わない

担がれどこかに連れてこられたかと思えば
床に乱暴に投げられ体に痛みが走る

「うぅっ」

叫びはくぐもった声にしかならない

どこかの部屋に閉じ込められて
3日ほどたった、まだ白ひげ海賊団の船の中だ
与えられる食事は一回、パンと水

目隠しと後ろで腕を縛られていて
身動きが取れない
だんだんと力がはいらなくなってきてはいる

ただ床に寝転がっていると
数人の足音が聞こえてきた

「おい、本当に大丈夫なのか?」

「何ビビってるのよ。
こんな子いなくなっても
かまいやしないわよ。」

クスクスと笑うその声は
聞いたことがあるナース達のものだ

「この娘、まだガキだが
育てば上玉になる。
おれが仕込んでやるか。」

下卑た男の声に鳥肌がたつ
身売りをされるらしい

「あーあ、あんたがマルコ隊長から
離れてればこんなことにならなかったのに。
馬鹿な子ね。さっさと連れて行ってちょうだい。」

袋のようなものをかぶせられ
また担がれる
もう暴れる気力はない

船を降りる気配で
自分はここに戻ってくることは
ないのだろうと絶望的な気持ちになった


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