隅っこ
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持ち場へと走っていく
きっと交代時間ギリギリだ

「ごめんー。遅れた!
ティーチ!」

今日の持ち場はマストで見張りで
同じ当番のはずの
ティーチの姿が見えない

あれ?と思いながら登りきると
不機嫌な声が足元から聞こえた

「遅せェ」

「う、わっ、エース!?」

三角座りをして眉間に皺を寄せながら
こちらを見上げている
まるで捨てられている子犬のようで
罪悪感で胸がしめつけられる

「いつもは起きたらいんのに
なんで今日はいなかったんだよ。」

「ごめんね。
エース気持ちよさそうに寝てたから
起こさなかったの。
エースはなんでここにいるの?」

「今日の持ち場をティーチに
代わってもらったんだよ。
お前の部屋にもいねェし。
ん?」

「え?」

立ち上がったエースは大きくて
子犬なんかではなく大型犬だ
本当に犬のように首元に顔を埋め
スンスンと匂いを嗅いでいる

「ちょっと、エース!
くすぐったい!」

腕の中に閉じ込められたような
この格好は恥ずかしくて
押し返そうとも体はびくりともしない

「マルコと同じ匂いがする」

その言葉で全身から血の気が引いていく
首元から顔をあげたエースと目が合う
鼻がくっつきそうな距離は心臓に悪い

「アリア、マルコの部屋にいたのか?」

「そ、そうなの。
なんか飲み足りなくてさ。
結局戻っちゃった。」

「それなら先に言えよなー!
具合でも悪くなったのかと心配してたんだ。
マルコといたなら安心だな。」

体を離して胸の前で手を組み
大きく頷いているエースは
一欠片もマルコとあたしの関係を勘ぐることもない
安心する反面、少し残念に思っている自分がいる

「それにしてもなんか赤いの増えてねェ?」

髪を持ち上げれ項が晒される

「ここ、すげェ赤くなってる。」

「・・・え!」

そこは昨日マルコが執拗に
口付けていた場所だった

マルコの仕業だ

そう思うとエースには見られたくなくて
上げられれている髪を手で直す

「お酒飲みすぎて湿疹でてるのかも。」

「お前、そんな体質なのかよ!
じゃあもう飲むなよ!!!」

「うん。そうだね。」


素直に受け入れてくれるエースに
やはり嬉しいような悲しいような
複雑な感情が湧いてきた


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