抜け出せない
::
血だらけの手
床に横たわる兵士
「フッフッフッ
アリアやるじゃねェか。」
首を持たれ上を向かされドフィに口付けされる
「もっと、早く殺してもよかったんだがなァ?」
ずっと手を抑えていたくせに、と思ったが
口に出すことはしなかった
この兵士を殺したのは紛れもなく自分だ
発情期には他の男とできないことが身をもって知った
あれは快楽とは程遠いものだった
言葉を待つこともなく続けられる口付け
死体があるという異様な空間なのに
身体は熱くなる
先程まで感じていた罪悪感さえ
発情期は消してしまう
早く、この不快感を消してほしい
ドフィが欲しい
それだけが今考えられることが出来る
◇◇◇◇◇
1週間後、気がつけば寝室も全て綺麗で
あの出来事はなかったかのようだ
いつ片付けたのかもわからない
覚えてるのは情事だけ
与えられる快楽は発情の苦しさから助けてくれる
隣にはドフィが寝ている
裸のままで窓辺へと近づいて外を見た
気持ちとは反対に空は透き通った青で
とても綺麗だった
項を触ってみると
当たり前だがそこにくっきりと
番の証、噛み跡が残されていた
奥歯を噛み締め涙を我慢する
泣いてはだめだ、現実から目を背けてはいけない
そう自分に言い聞かせてたのは何度目だろう
ベッドからはドフィの起きる気配がした
「アリア」
寝起きのドフィに呼ばれて
すぐにベッドへと戻る
「どうしたの…?」
「発情期も終わったはずだ。
今日はコロシアムに行くぞ。」
「・・・分かった。」
本当は行きたくはない
無意味に人が殺し合うところなど見て
楽しめるはずはなかった
◇◇◇
コロシアムに到着後案内されたのは
前と違う場所だった
「ドフィ、コロシアムの中見てきてもいい?」
「あァ、護衛を連れていけ。」
「いらない。もう、殺すことには慣れたもの。」
「・・・そうか。すぐ戻ってこい。」
行ってきます、と言って部屋を出た
行く場所は決まっていない
玩具の兵隊、キュロスに会いたかった
彼も元は人なのだろう
どうしても話がしたくて
護衛を付けるわけには行かなかった
prev /
next
top