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連れて来られたのは服屋さんなどが
立ち並ぶショッピングモールのような場所

新しい服とローブを買い与えられた
胸の刺青が見えるような露出の高い服だが
キッドは満足そうに鼻で笑う

「キッド、これ露出しすぎじゃない?」

「俺しか見ねェだろ。」

そんな事はないと思うがそのまま口を噤み頷いた

「お客様、来ていた服をお包みしました。」

キッドのことを知っているのだろう
店員は恐る恐る喋りかけてくる

「捨てておけ。」

「かしこまりました。」

店員を見ることもせずに
用が済めばすぐに店を出る

お店を出ると目の前に観覧車があった
本でしか見たことがないもので
実物を見たのは勿論初めてだった

「キッド、あそこ行きたい!」

「あ?ガキ臭いとこなんざ行くかよ。」

「ちょっとだけ、見に行くだけ!」

「見に行くなら1人でいけ。
俺達はここにいる。キラー、
オークションの開始まで時間はまだあるのか?」

「あァ。時間はある。」

「飛んで行ってこい。すぐに帰ってこいよ。」

「うん!!!」

許しを得た事ですぐに鳥の姿になり
羽を羽ばたかせ飛び出した

久しぶりに飛んでも身体は覚えているものだ

もう少しで観覧車、という時に
急に足を捕まれすごい勢いで下へと引っ張られる
一瞬の出来事で抵抗する暇もなく気がつけば
誰かの手の中にいた

「でっけェ!こいつ食えるか?!」

「やめなさいよ!絶対珍しい鳥よ・・・!
すごく綺麗な色だもの。
高く売れるかもしれないわ。
ねぇ、チョッパーどう思う?」

「見たことがない鳥だな・・・。
でも、売るのは可哀想だと思うぞ!」

ひやりとする会話を耳にして恐る恐る顔を上げてみると
無邪気な笑顔でこちらを見ている青年

(麦わらのルフィ・・・!)

手配書で見た顔そのままだった
後ろの女性はナミと言う名前だったはずだ

トナカイのような角の動物は確か
チョッパーと言う名前だったはずだ

周りをぐるりと見渡せば麦わら海賊団の
見た事のある面々が揃っていた

出会えた驚きと喜びで固まっていると
胸元に痛みが走った

「うわ!ルフィやめろ!
まだ生きてるんだぞ!」

「っ、」

痛みで集中力が切れてしまい
人間の姿へと戻ってしまう

麦わらのルフィは胸に噛み付いたまま目を見開く
皆も驚きで目を見開いていた

「え!人間!?」

「能力者か?!」

「おれ人間は食わねェ!」

「「そう言うことじゃない!!」」

頭を叩かれ胸から口が離される

「ご、ごめんね!うちの船長が・・・」

「お前、鳥になれんのか!
おもしれェな!仲間になるか?」

キラキラとした笑顔、想像していた通り
天真爛漫な性格らしい

ふるふると首を振るとフードが頭からズリ落ちる
胸元に掘られているキッドの名前を
指差しナミが声を上げる

「この子、ユースタス・キッドの仲間じゃない!
この子にも懸賞金がかかってるのよ。
へぇー!手配書じゃ顔わからなかったけど
可愛い顔してるのねー。」

顎を掬われマジマジと顔を見られる
その視線はどこか観察するようで
居心地が悪かった

「あなた、危険そうに見えないけど・・・」

「こいつ、誰かの仲間なのか?
そこ辞めておれの船に乗れ!」

ナミは自由に発言するルフィを殴りつける

「なんだよ!!」

「ルフィ、こんなに身体に
キッドの名前が入ってるのよ?
ただの仲間なわけないでしょ。」

「あ?仲間じゃないならなんだ?」

ナミが言っていることを理解していないルフィは
首を大きく傾げている

「なに、って・・・。 はぁ・・・。
もういいわ。とにかくこの子は仲間にならないのよ。
ていうか、『なれない』が正しいかもね。
こんなに独占欲を剥き出しにする男よ?
この子を船に乗せたら全力で取り返しに来そう。」

大きく溜息をついたナミに気をとられているうちに
また鳥に戻り思い切り羽ばたいて空へと逃げる

「あー!行っちまった!」

「あきらめなさい!」

もう追ってくることもなく
すぐキッドの元へと戻った

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