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キッドの顔が見れない
隣でケイトさんが絵の説明をしていたが
全然耳に入って来なかった
怒鳴り散らすかと思っていたが
それはないらしい

話が終わる気配がした

「アリア、帰るぞ」

その言葉に小さく頷く
ケイトさんをチラリと見ると
微笑みながら手を降っていた

黙ったままキッドの後ろをついて船へと戻る
部屋に入り促されるままキッドと共にソファへと座った
ソファの端に座りただ手を見つめる
反対側の端に座るキッドを見る勇気はなかった

「おい、何で黙ってんだ?」

「・・・キッドが、怒ってると思って。」

「あ?」

「キッドが言ったものと違うもの彫ったから」

ふん、と鼻で笑った後に
キッドに腕を引っ張られ引き寄せられる
手があがる気配がして目を瞑り身体が強ばる

覚悟していた衝撃は来ない
そのかわり頭に手が置かれた

驚いて顔を上げるとそのまま唇が重なる
触れるだけのキス

「海に嫌われた能力者が
海の女神に愛されるように
人魚を彫るなんざおかしな話だ。」

確かにそうだと思う
もうこの身体は海には入れない

「純潔、無償の愛という意味もあるらしいじゃねェか。
お前は俺に純潔を奪われた。
愛なんて幻想だ。なァ?」

あたしの指輪と同じ石の指輪をつけた親指が唇をなぞる

ケイトの言葉を思い出す

『ガーネットって石だと思うんだけど
変わらぬ愛情と深い絆をもたらす実りの石って
言われてるんだよね。』

キッドは意味をわかってつけているのだろうか

「キッド、」

あたしはキッドのもの
と言葉を続けようとしてやめた

言葉なんて意味がない

そのかわりに自らキッドの唇にキスをする

キッドは一瞬驚いたような顔をしたが
すぐに口角をあげた

「ふん、機嫌のとり方でもわかったか?」

大きな手が後頭部に回されキスをされる舌が口内を犯す
それだけで背筋がゾクゾクして痺れていく

力が入らなくなりキッドに縋り付くように体を寄せると
ぎゅっと抱きしめられた

「クク、刺青彫られて興奮してんのか?」

手の甲をキッドの舌が這うと
それだけで身体が火照っていく

「お前は俺のもんだ。
頭から足の先まで俺以外に許すんじゃねェぞ。」

何回もこの台詞をキッド言う
あたしは何回でも頷くのだ

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