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「おい、アリア。
また迎えに来るからそれまで待っとけ。
変なことされそうになったらそいつを殺せ」

部屋の入口から声がキッドが大声をあげて
返事を返す前にお店を出ていく音が聞こえた

「ひどいなー
そんな事しないのに。」

「すみません・・・」

あまり気にした様子もなく作業へと戻る

まずは左手にキッド海賊団のマークが彫られていく

想像していたよりも強い痛みに
額には汗が浮かぶ

「うわぁ!君、悪魔の実の能力者?
本当にすぐに傷が治っていくだ!
すごいなー!羨ましい!」

「そう、ですか?」

「羨ましいよ!彫り物って時間かかって
ケアとか大切なんだけど君の場合は
それが必要ないでしょ?
時間かけて描いていくの好きだけど
すぐに完成したものが見れるのは
初めてで興奮する!!」

大はしゃぎのケイトさんには悪いが
痛みで相槌を打つのもしんどかった

「最初はなんて男だって思ったけど
君って愛されてるよね。」

相槌を打つがほとんど話を聞いていなかったが
その言葉だけはやけに鮮明に入ってきた

「え?」

「だってあの指輪、あの男の人から貰ったやつでしょ?」

ケイトは刺青を彫るために外して置いてある指輪を指さす

「・・・はい」

「あれってガーネットって石だと思うんだけど
変わらぬ愛情と深い絆をもたらす実りの石って
言われてるんだよね。
同じものを彼も付けてたし。愛されてるよね。」

頭が真っ白になる
変わらぬ愛情・深い絆
意味がわかると次は顔が熱くなっていく

「でも、あの。
多分キッドも意味は知らないとおもいます。
あたしが欲しいって頼んだので・・・」

「うーん?買う時に説明されると思うけど・・・
ま。とりあえず愛されてるよねってこと。」

愛されてる

そんなはずはない
お金で買われて暴力をふるわれたりしているのに
そして自分もキッドを愛しているはずなんてないのに

その後もケイトは喋り続けたが
何を話したかは忘れてしまった

いつの間にか左手が終わり
言われるがままに右手を差し出す
痛いはずなのに慣れたのか苦痛ではなかった

相槌を打ちながらも
頭をぐるぐる回るのはケイトさんの言葉

『あれってガーネットって石だと思うんだけど
変わらぬ愛情と深い絆をもたらす実りの石って
言われてるんだよね。
同じものを彼も付けてたし。愛されてるよね。』

「はい、終わったよ!」

ケイトの声で我に返る

手の甲をみると左手には海賊旗のマーク
右手に人魚が彫られている
黒いシルエットだけだが髪が長いのと
足ではなく魚の尾があるので人魚だとわかる
人魚が全体に描かれ大事そうに抱えているのが
キッドの名前だった
素人目から見てもとても綺麗で
ずっと見てられるほど美しい仕上がりだった
けれどもキッドに言われたのは名前だけのはずだ

「ケイトさん、これ」

声が震えている

「あれ?聞いてなかった?
人魚って無償の愛、純血、
安全な航海を送るためのお守りでもあるんだ。
その人魚が抱えているのが彼の名前。
ロマンチックでしょ?君にぴったりだと思うだ!」

嬉しそうなカイトさんの顔を見ながら
さっきまで浮かれていた気持ちは急速に萎えていく

「あれ?やばい?
すっごいい綺麗に完成したのに・・・
大丈夫。彼にはちゃんと説明するから!ね?」

そうやって慰められてるとお店の扉が開く音がした

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