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酒場にはクルーがどんちゃん騒ぎをしている
今日は女性がいるお店ではないらしい
それをカウンターの席で酒を煽りながら眺めるキッドがいた

キッドの表情は穏やかで
あたしの前では見たことがない顔
キッドなりにクルーを大切にしているのだと思った
クルーもそれをわかっているから
頭!と慕うのだろう

「キッド、アリアだ」

キラーが入口から声をかけると
キッドは手を挙げる

「アリア来い」

いつもの眉間に力を入れたキッドの顔に戻っていた

「キラー連れてきてくれてありがと」

小さくお礼をいってキッドの元へ駆け寄ると
キッドの膝の上へ乗せられる
もう既にだいぶ飲んだのだろうアルコールの匂いが
キッドから漂ってきた

「アリア、手見せろ」

「手?」

疑問に思いながらも両方の手を差し出すと
キッドは手の甲を眺める

「右と左どちらがいい?」

「右手と左手?」

どちらがいいと聞かれても
何かをされるのだろうかと
少し怖くなる

「何するの・・・?」

「いいから答えろ」

「えっと右「遅ェな」」

答えようとすると言葉を遮られる

「遅せェから両手だ。
おい、お前ら後は好きにしろ!」

はい!っと威勢のいい声が返ってくる
すぐに酒場から連れ出された
キッドの背中にとぼとぼとついていく

キッドの足が止まり自分の足も止まる

「この島は彫り物が有名な島だ」

彫り物・・・?と言われ周りを見ると
体に刺青がある人達がいっぱいいる
夏島のこの島はカラっとした暑さだ
皆肌を出す服を着ていた

暑さのせいではない冷たい汗が背中を伝う

「キッド、あの、」

「拒否権はねェってわかってんだろ?」

考え直してほしいという前に遮られる
キッドに痛いほど手を握られ引っ張られながら歩く
逃げるとでも思っているのだろうか

次は何を彫られるのだろうか

怪しげな看板の店に入っていく

「いらっしゃい」

お店には明るい表情の男がいた
髪の毛は金髪で短髪の男
30歳半ばだろうか

陽気そうな男の顔、体には
様々な絵が描かれている

「こいつの左手には胸に入っているマークと同じものを。
右手には胸に入ってると同じ俺の名前を彫れ」

睨むように男を見るが気にした風もなく笑顔で答える

「おーけー。色も入れるならだいたい
1ヶ月くらいかかるけど時間は大丈夫?」

「そんな時間はねェ。そいつの体は傷の治りが早いから
今日中に全て終わらせろ。」

その言葉に男は目を丸くする

「そんなの無茶だ!しかも女性だよ?
彫られる方にも体力が必要なんだから!」

本当にわかってる?!というようにまくし立てる男に
キッドが怒り出すのも時間の問題だろう
額に青筋がたっている

「あの、本当に大丈夫なので。
一日でお願いします。」

自分の治癒能力がどれほどのものなのかは
分からないが早く治れと心から願った

少しの沈黙の後に男は溜息を吐いて
キッドとあたしを奥に招いた

「僕はケイト。こう見えて彫り物師は
40年してるから安心して」

40年・・・
ケイトさんは一体いくつなのだろう


店の奥は廊下がありカーテンで仕切られた部屋があった
その部屋に招かれ入ると机の前の椅子に座らされるた

キッドも入ってこようとするが止められ
ケイトはカーテンで仕切られた入口にある椅子を指さした

「君はこっち」

「・・・テメェ。」

「ここから僕と彼女だけ。
嫌なら僕は仕事をしない。
他に行けばいい。
この島で1番の彫り物師は僕だ」

「チッ、こいつに変な事したら
ぶっ殺してやるからな」

舌打ちをしてしぶしぶというように
入口の椅子に腰掛けていた

ケイトは満足そうな笑顔を浮かべながら
カーテンを閉めて必要な道具を手にもちながら戻ってきた

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