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『お前なんか生まれて来なければよかったのに!』
『お前のせいで...!』

母さん怒鳴る声がする
小さな子どもは小さく丸まっていて
子どもに向かってなにか怒っていた

これは夢だとわかる
あの子どもはあたしだ

(じゃぁ、産まなければよかったのに。)

思い出すのは罵る声と怒っている顔だけで
笑顔を見たことがない

そっと近づいてみるが
2人はこちらに気が付かない
いつの間にかあたしの手にはナイフが握られている

母さんが手を振りあげた瞬間に
あたしもナイフを掴んだ手を振り上げていた

馬乗りになり何度も何度もナイフを振り下ろす
気がつけば体は血まみれだ
幼い頃の自分がいた事に気が付き振り返れば
蹲っていた自分は立ち上がり
泣くでもなく、怒るでもなく
ただ微笑んでいた


あたしは小さい頃から
母さんを恨んでいたのかもしれない
それでも少しは好きで産んでくれたのかもしれないと
淡い期待を抱いていた。
母さんをの笑った顔がみたかった

でももういない、キッドが殺してくれた

なんだか可笑しくなり笑った
頬には涙がつたう

◇◇◇


「アリア、起きろ」

「ん...」

大きく体が揺らされ
強制的に夢の世界から引きずり出される

「な、に・・・?」

「あ?なんもねェよ。
魘されててうぜェから起こしただけだ。」

たまに見せてくれるキッドの不器用な優しさが
ギュッと胸を締め付ける

「そう、・・・キッドありがとう」

寝転がるキッドに抱きつき胸板に顔を埋める
頭の上から舌打ちが聞こえたが
引き剥がすこともしない

「キッド、」

「あ?」

顔を上げるとキッドはこちらを見る
いつものゴーグルも
髪の毛もセットしていない
何故だか無性にキスがしたくなった

キッドの頬に触れ顔近づけて唇を重ねる
何度も軽いキスを唇にして
唇をなぞるように舌を這わせると
キッドが舌を絡ませてくる

「は、主人の機嫌のとり方でも
わかってきたのか?」

キッドの大きな手で髪の毛と顎を掴まれ
更に激しく口内を侵される

飲み込む事ができなかった唾液が口の端をつたうのを
許さないように顎を掴んでいる手で拭い
口の中への指までも差し込まれる
舌と指が口の中に入ってきて苦しいはずなのに
苦しみが快楽へと変換されていく

「さっきも散々突っ込んでやったのに
足りねェのか?」

キッドの言葉に理性が戻り
急に恥ずかしくなってしまう

「ちが、う」

「お前が欲しいって言うんなら
突っ込んでやる」

大きな手が背中にまわりお尻をなぞるように撫でる
それだけで身体はもっとしてと震える

「っ、」

ドンっと音がして船が揺れる

「チッ」

窓の外を見て舌打ちをするキッドは
すぐにベッドから起き上がる
急いで体を起こすと窓の外で炎が見えた

「敵船だ。いつものとこに大人しく隠れてろ。」

すぐにコートを羽織るとすぐに出ていくのだろう
熱を持った体がだんだんと
冷めていくのと同時に心も萎んでいく

コートを羽織ったキッドは扉の所まで行くと
一瞬止まり「チッ」と舌打ちをして
ベッドの上にいるあたしをシーツごと丸め
隠し扉の中へ投げ込む

「い、たっ、」

体を打付けた衝撃とともに
次は唇に柔らかいものが触れた
それは一瞬で離れる

「キッド、」

何が起きたかわかっているのに
頭が理解してくれない
キッドを見つめるとニヤリとする

「続きは後でたっぷりとしてやる」

パタンと扉が閉まった
冷えて萎んでいた心は温かくなる

今までと少し何かが違うだけなのに



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