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銃口を女の額に再び突きつけると
安堵していた顔がすぐに怯えに変わる

「店にも連絡を入れないから、」

「お前が連絡を入れないなんて言葉が
信用できると思ってんのか?」

「お金も返すからどうか、命だけは」

「アリアには母親はどこか遠くの島に
行ったと伝えてやるよ。
自分を売った女の事なんかどうでもいいだろうがな」

次の言葉を発しようと口を開けた瞬間に
引き金を引くと軽く弾くような銃声がした

女はピクリとも動かない

「ククク、おい!キラー!
どうだ?助ける価値もねェ女だっただろ!」

「・・・違いない」

こみ上げる笑いが抑えきれずに口から漏れる

「アリアの母親はいなくなった!
父親もいない!あいつは俺以外に頼るもんはいねェ!
なァ、そうだろう?!」

「あァ、お前だけだ」

呆れたように呟くキラーに今は腹も立たない

「帰るぞ!すぐに船を出航させろ!」

◇◇◇

船が動き出す浮遊感で目が覚める
いつの間にかソファで眠っていたらしい

窓の外はすっかり暗くなっていた
ぼうっとしていると急に
バンっと乱暴に扉が開きビクリとする
部屋に入ってきたキッドはあたしを見つけると
真っ直ぐにソファにやってきて隣にどかっと座る
手に持っていた酒を飲むとゆっくりとこちらを向いた
朝よりも機嫌が良さそうだった

「アリア」

「・・・なに?」

「テメェは俺のモンだ。」

そんな事言われなくても

「わかってる」

唇が重なり差し込まれる舌に応えると
お酒の味が口の中に広がる

後頭部を押さえられ角度を変えて
キスは深くなっていく

やっと離してもらえた時には
身体が熱くなるなっていた
お酒が少し回ったのかもしれない
思考が鈍感になっていく

「テメェの母親は」

母親・・・?あぁ、あの女の事かと
ぼんやりと顔が思い浮かぶ
キスをしながらキッドの手は服を脱がしてゆく

「遠くへ行った」

キッドが殺した、とわかった
それでも何も思わない
好きになってもらいたくて頑張っていた頃の
幼い自分はもういない
売られた時点でもう決別できていたのかもしれない

「・・・そう、あたしは1人になったんだ」

その言葉にキッドは歪んだ笑みを浮かべた

「あァ、お前には俺しかいねェ」

キッドしかいないという言葉が
頭に響いて心を支配していく

(サヨナラ、お母さん)



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