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気持ちが沈んでいる私とは違い
キッドは相変わらず機嫌がいいらしい
しばらく街を回って見せてくれた
いつもと何かが違う
あたしを楽しませようとでもしてくれているように感じた
そんなはずなどないのに

「アリア、なんか食うか?」

あたしの意見を聞いてきたのは初めてで
目を丸くすると訝しげに見られ慌てて答える

「なにか、甘いものがいい」

「おう、ここで待っとけ」

噴水が見えるベンチに座らされ
ぼーっと去っていくキッドの背中を見つめていた

「アリア・・・?」

あたしの名前を知っている人など
この島にいるはずはない
声のしたほうを振り向くと
一人の女が立っていた

少し痩せていたが金色の髪に青い目が
記憶にある自分の母親と面影が重なる
この島は自分が生まれた島ではないはずなのに

「母さ、ん・・・?」

「あァ、やっぱりアリアね!
お前なんでこんな所にいるの?!」

駆け寄って来て思い切り髪の毛を掴まれる

この行動であぁ、母さんだと確信する
私に近づくときは殴られる時だけだった

「私が売ったところから
逃げたんじゃないでしょうね?!」

「ちが、ぅっ」

痛みに顔を歪めながら答えると
どこかほっとしたような顔になる

「お前が死んだと思ってけど
生きてるんなら知らせないと・・・」

その様子に微かに違和感を感じた
自分を売った後の事など知らないと思っていたのに
この口ぶりだと自分の事を知っているようだ

知らせるとは、あたしを
売っていた場所へかもしれない

「いや・・・!」

髪の毛を掴んでいた手を払い除け
睨みつけると一瞬怯んだように見えたが
逆らわれた事などなかった娘に反抗されたことが
逆鱗に触れたらしく顔を歪め手を掴まれる

「親の言うことが聞けないの?!
お前が生きてた事がわかれば
あっちも喜んでまた金をくれるはず。
来い!!」

「やだ、ってばっ、」

ベンチから降ろされそうになり
必死にベンチにしがみついた
なんで自分もこんなに必死なのかわからない
今もドフラミンゴの場所も変わらないのかもしれないのに
キッドの側にいたいと思っている


「おい・・・何やってんだ」

怒気を含んだ声だがその声だけでやっと
緊張していた心が解れていく気がした

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